トランプ VS クリントン、第一回の公開討論会が終了。投票日である11月8日も目前のアメリカ大統領選挙。依然、ネガティブなイメージで報道され続けるトランプ候補。かたや健康問題が危惧されるがハト派なイメージで紹介されるクリントン候補。果たしてどちらが、アメリカにとって、そして日本にとって、どちら国益になるのでしょうか? そもそも日本人はアメリカ大統領の実像を知っているのでしょうか? 
主要なアメリカ大統領を採点しながら、日米史を振り返る、絶賛発売中の『大間違いのアメリカ合衆国』。中でも日本人が思い描いているイメージとかけ離れたアメリカ大統領を厳選。倉山先生採点のアメリカ大統領ご紹介します。

クリントンの尻拭いに終始した大統領
第43代 ジョージ・W・ブッシュ

第43代 ジョージ・W・ブッシュ

①国益への貢献  1点

②世界秩序への貢献2点
☆☆
③正気を保ったか 4点
☆☆☆☆

 

<本文> 

  おバカの代名詞、「アメリカ史上最低の大統領」と評価されることも多く、「ブッシュ」の名前だけで落選するというほどの嫌われものです。

 今回の大統領選挙でも、ウォーカーの弟のジェブは早くから候補に挙がりながら、あっというまに敗北宣言をしてしまいました。

  アメリカでも日本でも、マイケル・ムーアの『アホでマヌケなアメリカ白人』(柏書房、二〇〇二年)が大ヒットして、ブッシュはさんざん「バカだ、バカだ」と叩かれました。
    確かに「ホワイトハウスってどんなところですか」と質問した小学生に「白いよ」と答えるのはどうかと思いますが、では、そういうことを言ってブッシュをバカにしまくる人がクリントンの人格についてどれだけ批判したのでしょうか。
    執務室で女性にXXをXxXらせる人格異常者と比べたら、ブッシュのほうがはるかに真人間です。
   ずいぶんと嫌われたものですが、相対評価をしなければ見えてこないものもあります。
   クリントンがさんざん儲けすぎたあと、アメリカは不況に突入しました。内政では大して何もできなかったので1点です。

 ハーディング、クーリッジの2点と較べてこんなところだと思い

ます。

 世界の秩序はクリントンの尻拭いですから、状況としてはトルーマンと一緒です。従って、2点。
 人格的には結構いいやつなので4点です。
   イラク戦争はアメリカにとって愚かな政策だったのは事実です。
 しかし、では、ネオコンがあそこまでやりたい放題やっている状況で、ブッシュ以外の人が大統領だったら止められたのでしょうか。

 アメリカが地上軍を動員したとき、よりによってこの四個師団を送るのかというくらい、精鋭揃いの師団を選んでいます。

 つまりは、「俺は一応やらなきゃいけないから本気で行くぞ。嫌なら引け」ということなのです。ところがサダムは、さっさと土下座すればいいものを引かなかったので、もう行くところまで行ってしまいました。

 そこへ行くと、さすがにアラファトは反射神経が違います。9・11テロのとき、いきなりカメラの前で「俺はアルカイダとは無関係だ」と言って献血を始めたのですから大したものです。

 サダムはそれまでの間に散々アメリカを挑発していました。
 パパ・ブッシュが二期目の大統領選に落ちたときには、「神の裁きだ」などと言いながら湾岸戦争戦勝記念碑を建てたほどです。
   いつからアラーがアメリカ大統領選挙を左右するようになったのか知りませんが。
   サダム・フセインにとって、9・11のあと、チマチマ譲歩して駆け引きしていられる状況ではありませんでした。
 人間の前でお腹をベローンと晒して仰向けに寝転ぶ犬のように、徹底したパフォーマンスで恭順の意をこれでもかと表して見せるほかなかったのです。

 イラク戦争はいまだに泥沼化していますが、米国とイラクの双方にとって不幸だったと言えるでしょう。

 ブッシュの貢献度評価に話を戻します。ブッシュが直面した9・11テロというのが、そもそもクリントンによるアフガニスタンとスーダンとケニアに対するデタラメな対応の尻拭いでした。
 アフガニスタンとスーダンというのは、1998年に、アメリカ大使館爆破事件への報復と称して、アフガニスタンとスーダンをミサイル攻撃した事件です。
 攻撃されたのは、スーダンの医薬品の5割以上を供給していた製薬工場でした。
   ケニアというのは、同じく1998年に、在ケニア大使による警備強化要請を無視しているうちにアメリカ大使館が爆破された事件です。

 報復の連鎖は、クリントンが原因です。反対派のブッシュ二世からしたら、たまったものではありません。

 こうしたブッシュ二世に対して、時の首相小泉純一郎は、“アメリカ幕府の外様大名”として筋を通した振る舞い方をしました。

 特に、9・11という非常時に、いち早く支持を表明したことは重要です。これがあったから、アメリカは拉致問題で小泉首相を全面的にバックアップしたのです。

 ひと言で言えば、佐藤栄作以降の歴代内閣で、小泉純一郎だけがちゃんとまじめにアメリカの属国をやっていたということです。

 よく、今の日本は情けない、アメリカの属国にすぎないという議論がありますが、実は属国すらちゃんとやっていなかったのが実態なのです。

 ブッシュが強いうちは小泉の権力が保たれていて、日米関係は良好でした。ところが、2003年からイラク戦争が始まり、2006年になるとブッシュは中間選挙で敗北します。
 ちょうど小泉から安倍晋三に内閣が代わったころです。ブッシュがレームダックしたために、安倍内閣を応援できなくなって、以後、日本の政局は迷走していきます。

<採点方法>
① アメリカの国益にどれほど貢献したか
② 世界の秩序にどれほど貢献したか
③ いつまで正気を保ったか
①と②は他の国の指導者にも適用可能な普遍的なものです。
そこへもうひとつ③の基準がどうしても必要なのがアメリカならではです。①はアメリカ人から見たときの基準、②はアメリカ以外から見た客観的な基準、③は自然科学的基準です。各項目5点満点の5段階評価です。

大間違いのアメリカ合衆国』より