ハワイ作戦の最大の目的は、米国国民の戦意を喪失させることだったが、結果は逆に一夜にして国民を結束させてしまった見通しの甘さがあった。大西は“真珠湾は実は失敗だった”と言っていたが、その通りではなかったかと指摘する。

 ミッドウェー海戦の大敗北は、当時太平洋には空母は1隻もいないはずという情報分析の甘さに山本が気づかなかったこと、だからこそ、愛人宛に今度は大した獲物はいないと手紙に書いたり、「空母撃沈さる」の報告を将棋を指す手を休めることなく聞き流していたこと、等々、はたして最高指揮官として適切な態度といえるのかと詰問する。

 さらには、敗北後に、第1航空艦隊の南雲忠一司令長官と草鹿龍之介参謀長を「仇をとらせてください」の訴えを受け入れ、更迭しなかったのは、間違った温情主義であり、さらには自分にまで責任が及ぶことを防ぐ保身の術ではなかったのか疑いを投げかけている。

 このように大きな構想は描けても、実際の作戦指導では大きくつまずき、名将たる技量を発揮出来なかったことは歴然としている。その後の海戦は見るべきものはなく、ほどなくして米機に撃墜されて生涯を終えた。自らの力量に見切りをつけた“自殺的視察飛行”ではなかったのかと、思えてならない。

ラバウルで出撃する兵士を見送る山本五十六