三重県津市にある三味恒(しゃみつね)は、大正12年(1923)創業の和楽器専門店。販売だけでなく、箏(こと)や三味線の製造、修理なども行い、親子4代、100年近く受け継がれた技術と地域密着の姿勢で、和楽器の発展を支えている。今回は三味線の製作過程を見せてもらった。普段はピアノを弾いているKさんにとって、日本の歴史ある弦楽器はどう映ったのか?
 

手作業でしかできない三味線の音を決める「皮張り」

三味線の皮張りの様子。

 三味線作りの基本中の基本となるのが、胴体に皮を装着する皮張り作業だ。まず、糊で皮を胴体に接着。そして、木栓(もくせん)という道具を皮と胴体にかけて、縄でゆっくりと伸ばしていく。

「ここからが難しくなるんですよ」と正洋さん。皮の部分を手で叩き、その音に耳を傾けるのは息子さんであり4代目の拓弥さんだ。

三味恒の4代目・川合拓弥さん。

「僕はこの仕事を始めて7年目なんですが、この皮を引っ張り、胴体に張るという作業ができるようになるまでは大変でしたね。良い音を響かせるためには、限界まで皮を引っ張っていくことが必要なんですが、その見極めができない間は、張っては破って、張っては破ってのくり返しでした。こうやって、皮を叩きながら、自分の耳で皮の限界を見極めるんです」

 一見、ピンと張られたように見える皮だが、さらにもじりと道具で引っ張り、その後さらにひねって四面を固定。そのえで、楔を打ち込んで、皮の音を確かめる。楔の打ち込み具合で皮の張りにも変化が生まれるため、一音一打という、微調整が続く。

「ドラムのスネア(ドラム)をチューニングする方法と似ていますね」と、Kさんは興味深々。「そうなんですよ。少しずつ音を聞きながら、張っていくんです。丁寧に手作業を重ねないと、いい音は出ないのです」(正洋さん)。
いかに音を響かせるかは、この「張り」が重要なのだ。