<第61回>

12月×日

【「誕生日 サプライズ」】

 

誕生日 サプライズ」で検索すると、この世はなんと多様なサプライズで溢れているのだろう、と愕然とする。

正直「ここまでやるか」とちょっと引くほどのサプライズ実例が、そこにはあまた存在する。

・水族館協力のもと、イルカに誕生日プレゼントを運ばせる。

・誕生日の人の携帯電話の着信音をこっそりバースデーソングに変えておき、当日の良いタイミングで鳴らす。

・誕生日の人の部屋にこっそり入り、部屋中を風船だらけにしておく。誕生日の人が帰ってきて部屋の様子に唖然としている姿を確認したら、クラッカーを鳴らしてクローゼットの中から登場。

などなど。

挙げていけばキリがないほどのサプライズアイディアが、ネットにまとめられている。

「携帯電話の着信音をこっそり変更する」という部分に若干の違法性を感じたり、「こっそり部屋に入る」という部分に明らかな違法性を感じたり、「唖然としているところを見計らってクローゼットからクラッカーを鳴らして登場」という部分に下手したら死人が出るんじゃないかと不安になったりもしたが、やはりそこまで手の込んだサプライズで誕生日を祝われたら、きっと嬉しいに違いはないだろう。

今日、街でこんな光景を見た。

駅の改札口から三人の女子大生風の女性が歩いている。

三人は横並びに身体を密着させ合い、よく見ると互いに腕を組んでいる。

真ん中にいる子が叫び声を上げている。

「怖い怖い怖い!ここ、どこ?え?もう電車降りたの?」

よく見ると、その子は顔全体を黒いパーカーのようなものでぐるぐる巻きにされ、視界を奪われている。

一瞬、過激派グループに囚われた人質にも見えてしまう。

両隣の女の子たちはニヤニヤしながら、

「大丈夫だって」

「はい、そこ段差あるから気をつけて」

とその人質と化した子を誘導していた。

その光景をしばらく呆然と眺めてから、ああ、サプライズか、とやっと僕は悟った。

きっと真ん中の子が、誕生日の主役なのだろう。

友人二人に視界を奪われ、どこともわからない場所へと連れていかれる。目隠しのパーカーを外すと、そこはイタリアンレストラン。そしてテーブルにはたくさんの大学の友人たちが。しかもよく見ると、テーブルの奥には先月別れたばかりの彼氏であるアツシまで…。

「え?みんな?それに、アツシ?ちょっと、これどういうことよ!?」

「せーの!ユッコ、誕生日おめでとう!」

「み、みんな…」

「ユッコ、ハッピーバースデー。出来ればヨリを戻したい」

「ア、アツシ…」

「ユッコ、いや小林由里子くん。誕生日おめでとう」

「ゼ、ゼミの先生まで!」

「よーし、ユッコの誕生日を祝って神輿をかつごう!わーっしょい!わーっしょい!」

と、まあ、僕には充実したキャンパスライフを送った経験が一度もないので完全に左脳だけで想像してみたが、そんな感じのサプライズがこれからこの真ん中の女の子に待ち受けているのだろう。

微笑ましく思いながら、三人組の行く先を目で追う。

そして、「え」と思った。

三人組は、イタリアンレストランなどではなく、駅前の小汚い雑居ビルへと吸い込まれていったのだ。

日本の大学生のサプライズ好きには、目を見張るものがある。

もはやレストランやカラオケなどで誕生日を祝うなど平凡。あたしたちは雑居ビルから、新たな日本のサプライズシーンを発信したい。そんな気概を、彼女たちの背中に感じた。

雑居ビルを眺めながら、あの女の子はどんなサプライズパーティーによって祝われているのか、僕は想いを巡らせた。

それから、もしくはあれは本当に過激派グループに囚われた女の子だったのでは、という点にも想いを巡らせた。

まったく、サプライズとはいつも違法性と隣り合わせである。

 

 

*本連載は、毎週水曜日に更新予定です。

*本連載に関するご意見・ご要望は「kkbest.books■gmail.com」までお送りください(■を@に変えてください)