薬を飲むとその成分が小腸などで吸収され、血液によって全身に分布。成分が肝臓を通ると酵素によって代謝(無毒化)され、腎臓から排泄される。ところが、年齢を重ねるとこうした代謝が鈍くなり、体内に薬が残りやすくなるので副作用も出やすくなる。介護老人保健施設長をつとめる医学博士が、多剤投与の危険性に警鐘を鳴らす。

 

 体調を崩して病院へ行くと、まず薬が処方される。では、別の症状が出たらどうするか。もちろん病院に行って、また新たな薬をもらう。年齢を重ねるとこうした傾向は強くなり、外科に内科、整形外科、泌尿器科など、複数の医師にかかり、10種類以上の薬を処方されている人も少なくない。なかには20種類近い人も……。
 そんな状況を見て、高齢者への予防医療を指導している医学博士の岡田正彦さんは、「多くの患者が薬漬けにされて健康を害しているのではないか」と考えるようになったという。
「症状、病気に合わせて薬を出すのが西洋医学の原則です。しかし、さまざまな症状、病気を同時に抱えている人もいる。そうなると原則がいろいろな弊害を生んでしまう。もっとも目につくのが薬の出しすぎ、飲みすぎです」。
 なかでも、岡田さんが危惧するのが薬の飲み合わせだ。
「一つひとつの薬は効果・安全の保証はされています。しかし、2種類の薬を一緒に飲んだ場合、効果は弱まらないか、副作用はないのか、そうしたデータはまずありません。3種類以上の組み合わせなら天文学的数字になり、製薬会社でも膨大な組み合わせの結果をすべては把握していません。調べてみると、一緒に使ってはいけないはずの薬を併用していたり、長期間使い続けるとひどい副作用があるという薬を処方しているケースもありました」。
 岡田さんは患者に対して1~3種類を目標に、できるだけ減薬へ向けた指導をしているという。
「最新のエビデンス(科学的根拠)を勉強していない医師、勉強していても正しく理解していない医師は少なくありません。しかも、いわゆる新薬は長期使用した場合のエビデンスがまだない。本当に良いものなのか、実は医師にもわかっていないことが多いのです。それでも、薬の効用とリスクについて正直に話してくれるほうが、説明もなく安易に多くの薬を出す医者よりも、信じていい医者だといえます」。

 

イラスト/赤池佳江子

 

【薬の処方で見分ける「良い医者」】
1 処方する薬が少ない
2 新薬をあまり処方しない
3 副作用について説明する

処方する薬の種類が多かったり、安易に新薬を処方する医者は要注意。効果と副作用がはっきりしている既存薬を柱とする医師は安心できる。また、副作用を説明されると患者も薬に対する意識が変わるきっかけにもなる。


岡田正彦さん
新潟大学名誉教授、水野介護老人保健施設長、水野記念病院常務理事。
新潟大学医学部卒。1990年に同大学教授となり、動脈硬化症、予防医療学などの研究に従事。2012年より現職。『死ぬときに後悔しない医者とクスリの選び方』(アスコム)など著書多数。
※『一個人』2016年11月号