■投手豊作、運命のドラフト

 

 ドラフトの日を迎えた。
 日本野球界を背負って立つ未来の名選手たちがその第一歩を踏み出す瞬間である。
 今年は投手が「豊作」だと言われている。
 社会人では東京ガスの山岡泰輔、大学生ではドラフト1位の競合が予測される田中正義(創価大)を筆頭に佐々木千隼(桜美林大)、柳裕也(明治大)、神奈川大の浜口遥大ら、即戦力として期待される逸材が揃っている。高校生も負けていない。寺島成輝(履正社)、高橋昂也(花咲徳栄)、藤平尚真(横浜)、今夏の甲子園優勝投手の今井達也(作新学院)を筆頭に、ほかにも上位指名が予測される投手はたくさんいる。

 ここに挙げた投手たちのなかで、田中正義、佐々木千隼、浜口遥大をのぞくと多くの投手が甲子園で注目をされた。彼らにとっては、甲子園が大きな存在であったことは(当然だが)間違いない。

 さて、今回はこのドラフトの日にあわせて、シリーズでお送りしてきた「高校野球は投げすぎなのか」という議論について、メジャーリーガー最大の輸出国である「ドミニカから見た甲子園」の後篇をお届けしたい。
 いまなお、議論の的となる登板過多か否かの問題について、第一回に『アメリカ球界が見る「KOSHIEN-甲子園-」「日本の高校球児は投げすぎだ」は本当なのか。』と題して、アメリカ野球が高校野球を見る、ひとつの指標を提示した。
 そして次に『アメリカ野球が見る「KOSHIEN-甲子園-」(上)最大のメジャーリーガー産出国・ドミニカが「投げない理由」』として、ドミニカ共和国がアマチュア時代に「投げない理由」を紹介した。
 これに続く後篇となる本稿も、前回同様、メジャーリーガーや記者などへ徹底的な取材をとおして、日本人投手の評価とそのポジティブ、ネガティブ両面を記した杉浦大介氏の『日本人投手黄金時代』より、引用する。

■球数を投げる功罪

 アメリカであれ、ドミニカであれ日本の甲子園について説明をすれば必ずといっていいほど、驚きと否定の声があがる。怪我の可能性が増すという意味で日本のやり方は危険過ぎる、というのがその大きな理由になる。

 しかし興味深いのは、一方で、そんなドミニカ共和国のメディアたちも、メジャー関係者と同様に、自分たちとはまったく違うカルチャーを持つ日本野球のスタイルを完全に否定しているわけではないことだ。

 まるでステロイド使用を肯定するかのような言葉も残したファンティーノ氏も、身体を張ってチームプレーに徹する日本選手たちの良さは認めている。

「日本人選手たちはとても忠誠心が強く、何よりもチームを第一に考える。すべてを自分たちで背負い込み、失敗を許そうとしない。とても誇りを持ってプレーするし、そんな責任感の強さが彼らのアドバンテージだと思う。キラー・インスティンクトが欠けているように感じるときもあるけど、その献身的な姿勢のおかげでさまざまな形で所属チームに貢献できているのは確かだろう。(ワールド・ベースボール・クラシック、五輪のような)国際舞台での強さも、チーム全員が一丸となって臨めることが要因じゃないかな」

 そしてカブラル氏は、これまでも盛んに話題になってきた投手の育成方法の違いに触れ、日本システムの長所にも言及する。カブラル氏はドミニカのウィンターリーグでもこれまで何人かの日本人選手を目撃してきたという。