朝のあんパンに含まれる砂糖と精製小麦に注意!

 
腸と脳は非常に密接な関係であることは100年以上前から科学者の間では認識されていたが、現在、その考えが改めて注目されている。そのきっかけの一つとなったのが、腸内細菌の働きが解明されてきたことだ。

私たちの脳は1000億個もの神経細胞が作るネットワークでできていて、電気信号でやりとりしている。神経のネットワークは全身に広がっているが、脳に次いで多い場所が、実は腸なのだ。国立病院機構刀根山病院院長・佐古田三郎さんは話す。

「腸には2〜6億個の神経細胞が存在し、これを介して脳と腸は緻密にコミュニケーションをとっています。腸内細菌はこの神経細胞を通じて脳へ電気信号を送ることができるのです」

例えば、ラクトバチルス菌といった乳酸菌は、不安や抑うつ状態を軽減するといった研究結果もあるなど、腸内細菌が脳の働きや感情に大きく影響していることが分かってきている。認知症はこの腸内細菌と関連が深く、特にアルツハイマー病は、最近は「脳の糖尿病」とも呼ばれ、糖尿病に見られる病態─インスリン抵抗性(インスリンの分泌が欠乏・低下して正常に機能しない状態)の出現が認められている。

「インスリン抵抗性の出現は、主に高血圧や運動不足などが原因といわれていますが、腸内細菌で形成される腸内フローラのバランスの乱れも要因の一つだと考えられています」

また、皮膚に感覚神経があるように、内臓にも感覚神経が存在し、腸も自ら受けた刺激を感覚神経で脳に伝える。脳は自律神経やホルモンを介して腸に影響を与えている。つまり、脳から腸へ一方向で指令を出すわけではなく、互いに連絡を取り合う〝腸脳相関〟の関係にある。そのため、腸が不快感を感じると、それが脳に伝わり、その症状によっては神経細胞が変性して神経ネットワークの繋がりを悪化させ、時に記憶障害を引き起こすこともある。

この2つの事柄から、腸内環境=腸内フローラのバランスを整えることが、脳の健康にも繋がると考えられる。そのためには腸内フローラの善玉菌が優勢であることが望ましい。

「腸内細菌は食べるもので変化するので、食べたものが体の毒になる場合もあります。例えば、砂糖や肉といった動物性食品は悪玉菌のエサになるため、結果、悪玉菌が増大することに。他に精製された糖質(白米や小麦など)も同様です。また、これらの食材は過剰摂取すると、食後高血糖状態を引き起こしてインスリンを過剰分泌させ、これを繰り返すことでインスリン抵抗性を招く危険性もあるため、認知症には極めて注意したい食材です」

逆に善玉菌を増やす食材は、生きた乳酸菌や麹菌を取り込める発酵食品、食物繊維が取れる野菜、未精製の穀物などは積極的に摂りたい食品になる。

「私は患者に対し、悪玉菌を発生させ、インスリン抵抗性を招く典型的な食事例として、『毎朝のあんパンをやめなさい』と話すんです。あんパンは砂糖や精製小麦を使ったものですから」

そして、佐古田さんがすすめる食事は玄米ご飯、味噌汁、青魚、根野菜を中心とした野菜を食べること。パンなら全粒粉のパンを選び、砂糖も塩も少ない質素な食事が一番いいと話す。

「私がすすめる食事は特別難しい食材を使ったものではありません。いわば日本人が昔から食べてきた和食を積極的に摂ること。それこそが腸と脳の健康につながります」

佐古田三郎さん
国立病院機構 刀根山病院院長、大阪大学名誉教授。1951年広島県生まれ。75年に大阪大学医学部卒業後、2000年より大阪大学医学部神経内科教授。2010年より国立病院機構 刀根山病院院長に就任。