<第65回>

1月×日

【「インド ビザ 申請」】

 

近々、旅行でインドへ行くことになった。

堂本剛をして「僕はあそこに行って人生観が変わった」と言わしめた、あのインドである。いや、堂本剛が本当にそんなことを言ったのかどうかは知らないが、「なんか堂本剛ならそんなこと言ってそう」という勘を根拠にあてずっぽうで書いただけだが、とにかくインドに行くことになった。

インド入国のためにはビザが必要で、そのビザを取得するためにはインターネットで事前に「インドビザ申請書」を作成しなければならない。

インドビザ 申請書 作成」でさっそく検索。するとインドビザ申請書作成について「すごくめんどくさい」という声が多く上がっていた。

いったい、インドビザ申請書は、どれほどめんどくさいのだろうか。IKEAの棚の組み立てよりめんどくさいのだろうか。友人宅で集まって焼肉パーティーをするにあたりホットプレートを持ってくる係になってしまったときよりめんどくさいのだろうか。スパゲティ屋五右衛門で急に無口になって店を出たあとにその理由を尋ねると「あたしが行きたかったのは、もっとちゃんとしたイタリアンの店だった」とか言い出す彼女よりめんどくさいのだろうか。

おそるおそる、インド大使館のHPから申請書作成コーナーへと踏み入る。

「あなたの名前は?」

まず、名前を入力する。誤字のないよう、慎重にキーを打つ。

「あなたの宗教は?」

いきなり踏み込んだ質問である。インドよ、初対面の人に宗教とプロ野球の話はしちゃダメだと親から教わらなかったのか。若干不信感をおぼえつつも、「特になし」と入力する。

「あなたの最終学歴は?」

なんてことを聞いてくるのだ、インドよ。誰彼かまわずそんな質問をしているのか、インドよ。あれか、学歴コンプレックスなのか。他人の学歴を聞かずにはいられないのか。そういうお前の最終学歴はどうなんだ。コンプレックスを抱えているところを見ると、あれか、簿記専門学校とかか。

「あなたの顔の特徴は?」

突然、テレクラで待ち合わせの約束をしてる気分にさせられた。

「あなたの仕事は?」

「あなたの仕事の役職は?」

「あなたの仕事の階級は?」

質問攻めである。質問のミルフィーユである。この辺りで気づき始めたが、インドビザ申請書のめんどくささとはつまり、質問攻めのめんどくささなのである。

「あなたは何?」

「あなたは誰?」

「あなたは本当に実在する?」

脅迫にも似た質問の雨嵐に自我のダムが決壊しそうになる。自分自身はいったい何者なのかと、我を見失う。

朦朧としながらも、作成を進めていく。

「あなたの父親の名前は?」

ついに僕に飽きたのか、父の名前を知りたがるインド。「ねえ?なんで急に僕じゃなくてパパに興味が湧いたの?ヤダよ、僕だけを見てよ…」という非常に危険な感情が湧く。

「あなたの母親の名前は?」

そして、母の名前まで知りたがるインド。もはや貪欲の質問魔である。

「あなたの母親の出生地は?」

僕の母の出生地を知って、いったいなにをするつもりなんだ、インド。まさか僕の母を抱くつもりなのか。

こういった質問が、なんとおよそ100項目も続く。これはビザ申請ではなく、もはや新人研修かなにかである。

そして驚嘆すべきは、この申請書類をネット上で完成させたら申請完了ではなく、必ずプリントアウトをして最寄りのビザ申請センターまで持っていかなくてはならないのだ(意味不明)。

そしてセンターに持って行ったところでもしひとつでも誤字があれば、また家に帰ってイチからやり直さなければならないのである(鬼か悪魔)。

しかもビザの受け取り時間は17:00〜17:30の間のみなのである(僕はお前の犬なのか)。

ビザ申請からしてこのめんどくささ。悠久の国インドの不可思議さにさっそく触れ、胸が高鳴ったかというとそんなわけはなく、ただただ「インド、行きたくねえなあ」という想いだけが残った。

 

 

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