今年ノーベル生理学・医学賞を受賞した「オートファジー」研究は、将来ガン治療への応用も期待されています。では、2012年に同賞を受賞した山中伸弥氏の大発見「iPS細胞」は、4年経って医療への応用の可能性がどこまですすんでいるのでしょうか。サイエンス作家・竹内薫さんがやさしく解説します。

iPS細胞は倫理的制約を受けにくい

 

 そもそもiPS細胞とは何か? 簡単におさらいをしますと、iPS細胞は「万能細胞」とも呼ばれ、どんな細胞にも成長させることができる性質(ただし胎盤などを除く)を持ち、人間の皮膚などから作ることができます。ここで、ともに万能細胞と呼ばれるES細胞との違いを考えてみましょう。性質としては幹細胞と言っていろいろな細胞に枝分かれする前の「幹」になります。

 iPS細胞が人間の皮膚からでも作られるのに対し、受精卵から作られるES細胞は基本的には本人の細胞だけでは作れない。そうなると限界があります。

 自分の細胞で薬が効くかどうかを試そうと思ってもできないわけです。また本来受精卵は人間になる可能性があったものですよね。それを培養してES細胞に作り変え、例えば心臓の細胞に変えたり、なにか別の臓器の細胞に変えてしまうという操作は倫理的な問題にぶつかります。

 その点、iPS細胞は皮膚やその他の細胞から作られる。それをとってきて、いわば時間を巻き戻して、それを別の細胞にする。それは全然誰も文句言わないでしょう。

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