近年サイエンス分野での日本人ノーベル賞ラッシュが続く。しかしそれは実は過去の「貯金」でとっているのであって、未来は決して明るくないという。それはどういうことか。日本の研究をとりまく厳しい実情をサイエンス作家・竹内薫さんがやさしく解説します。

いまのノーベル賞ラッシュは過去の「貯金」のおかげ!?

企業は研究を「金のなる木」と見ていたのか

 日本の基礎研究はちょうどバブルの時、1980~90年代にピークを迎えました。それでバブルが崩壊した時どうなったかというと企業が基礎研究に出していたお金を引き上げてしまったんです。バブル時は潤沢な資金があったのでお金を出して、基礎研究所みたいなものを作っていた。しかしいまは基礎研究所というのは、ほとんどなくなりました。

 大企業が作っていた基礎研究所は、全部研究開発のいわゆる「応用」の所に統合されてしまい、基礎研究部門はほぼ閉鎖されてしまいました。だからいまは基礎研究の場は大学と国の研究所だけです。対してアメリカではいまだに企業が基礎研究をやっています。そこら辺の考え方が違いますね。

 やはり日本は科学を海外から輸入してきたので、自国で育てるという意識が低い。ちょっとお金がなくなったらすぐにやめてしまった。いまは日本人科学者が毎年のようにノーベル賞を受賞できているわけですけど、それは20~30年前の業績、「貯金」でとっているといっても過言ではないです。

 オートファジーの大隅(良典)先生が基礎研究の大切さを繰り返し説いているのは、いま周りで基礎研究をやる若者が育っていないという現状があるからです。これからが危ないと。だから大隅先生は「若い研究者への支援に」とノーベル賞の賞金を寄付すると言っているのです。

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