広島カープ優勝には、長い間待ち焦がれた多くのファンが酔いしれた。25年間もの間、辛酸を舐め続けたチームは今年、黒田博樹、新井貴浩らベテラン陣と菊池涼介、丸佳浩、鈴木誠也ら若手選手がともに躍動し、ついにセ・リーグの頂点に立った――。
 カープの不遇の時代を書き続けた雑誌がある。
 その名は『広島アスリートマガジン』。
 広島市の出版社が刊行する地元のスポーツを専門とする月刊誌だ。といっても誌面の7割はカープの情報。「カープファンの雑誌」として認知されている。
 その『広島アスリートマガジン』の創刊は2003年だから、雑誌ができてから10年間は「Aクラス」を伝えることすらなかった。勝てないチームを取材し続けた出版社の運営が簡単であるはずがない。それでも「いま」優勝を伝えることができたのは、編集部の熱い思いと、それを支えたひとりの男がいたのである。
 現役時代カープ初優勝に貢献し、また監督としても広島カープを支え続けてきた故・三村敏之だ。
 RCC中国放送でカープを取材し続ける坂上俊次氏が、カープ優勝のサイドストーリーを紹介する。

■171冊目での“初優勝”

 最新号には「優勝」の文字が躍った。胴上げされる緒方監督の姿に、抱き合う黒田博樹と新井貴浩、中崎翔太を持ち上げる石原慶幸……。カープ25年ぶりの優勝は創刊以来、171冊目での“初優勝”であった。

 カープファンには欠かせない月刊誌『広島アスリートマガジン』。2003年の創刊から発行を続ける“広島発のスポーツ専門誌”には根強い読者が多く、今では北は北海道、南は沖縄までの定期購読者を獲得している。それは、我が子の活躍を見守るために定期購読を続けるカープ選手のご両親もいるほどだ。
 発行するのは株式会社サンフィールド。広島市内のビルの一室を借り、7人が働く出版社だ。定期刊行物はこの『広島アスリートマガジン』のみ。ほかに、カープやサンフレッチェ広島といった地元に根ざしたスポーツ関連の書籍などを刊行する。2015年にはカープの元監督である野村謙二郎氏の『変わるしかなかった。』も手がけた。

 広島にはカープ雑誌が常に存在してきた。カープ黄金期と言われた1980年代は『月刊カープファン』『ザ・カープ』という二冊の定期誌があったが、1990年代に入ると休刊に追い込まれる。1993年からは広島アスリートマガジンの前身となる『アスリートマガジン』(アスリート社発行)がその役割を引き継ぐも、2000年に入り出版事業の経営は厳しさを増していた。この頃はカープも勝てなかった。そうした状況に加えて、地方の出版社がコストのかかるスポーツ取材を軸に戦っていくことは簡単ではなかったのだ。