<書評>

高山正之×川口マーン惠美

『日米独-10年後に生き残っている国はどこだ』(KKベストセラーズ)


 日本がこれほど混迷している元凶は、やはり「朝日新聞」だ!
ドイツのジャーナリズムも「反日小児病」が治らない低レベル

 ドイツ在住の川口マーン惠美さんは、最近よく日本に来られる。著作も次々と発表され、いずれも話題作だ。
 高山さんについては、紹介するまでもないが、辛口コラムの達人、『週刊新潮』巻末の氏のコラムは人気が高く、最終ページから読み始める人が多い。
 この二人、共通点がある。
 川口さんはご主人の赴任先としてバグダットに滞在し、高山さんは特派員としてテヘランにあって、それぞれがイラン・イラク戦争に遭遇した。評者(宮崎)はイラン・イラク戦争の終盤の頃、バグダットからフォア半島の戦闘現場へ行ったことがある。時期的にはふたりとちょっとずれていたかもしれない。
川口さんが言う。
「中東の紛争では、やはり欧米諸国は敵味方に幅広く武器を提供して儲けていますね。実は2015年の武器輸出額は、アメリカもドイツもイギリスも前年比で倍増している。『イスラム国』が暴れてくれているおかげと言えます」
 すかさず、高山さんは「中東は『荒れている』のではなく『荒されている』。そこが、本来問題とすべきだと思います」と答える。
 ISの凶暴なテロリズムの嵐によって、サウジアラビアは政治的にも経済的にも窮地に落ち込み、イランはアメリカと国交回復となり、イスラエルはトルコとともにロシアへ寄った。
 これからも中東は荒れるに荒れるだろう。

 ともかく二人とも国際経験が豊かなので話題は上から下、右から左、地球の表から裏側へ飛んでも饒舌は尽きず、とくにドイツのジャーナリズムの病的な反日症候群の解説はわかりやすくて有益だった。
 アベノミクスがうまく行かないのも「原発をやめてエネルギー戦略が迷走しているから」だという適切は解説は正論である。

 さてドイツとフランスで喧しい議論になっているトルコ糾弾について、つまりアルメニア大虐殺に関して、真相はいまさら分かるわけはないが、当時の歴史的背景、戦況、戦闘状況などの事実を積み上げていけば、次のことが分かると高山さんは言う。
「トルコ兵がロシアと戦って惨敗して戻ってきました。そうするとトルコ国内のアルメニア人たちがロシア軍と内通して国境を守るトルコ軍の背後をつこうとした。それでアルメニア人をロシアとの国境地帯から遠く離れた、当時トルコが持っていたシリア領に移送したわけです。ところが、正規軍がすくないので護送役にクルド人を使いました。そのクルド人が移送中に自分たちが護送しているアルメニア人を殺して、家財道具をすべて奪って逃げたわけですよ」
 この事例は日本のBC級戦犯を想起させると、指摘するあたり国際比較としても、納得のいく説明が展開されている。
 ドイツの南京事件の報道にしても、検証をまったくせずに中国の言い分を垂れ流すドイツの新聞だから「トルコにはトルコの言い分があるはずなのに、それが報道されいない」と川口さんは改めてドイツマスコミの歪んだ現実を提議している。
 国際情報の裏側の逸話が多く参考になった。

 

*「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成28年(2016)10月24日(月曜日)より転載