人はみな、それぞれ与へられた天職がある。
職分を如何に巧みに処理するかによって、
その人の値打ちがきまる。
──山本五十六

 人材育成に関して、まさに正鵠を射るような至言を数多く残している山本五十六氏。広島県の江田島に存在した旧大日本帝国海軍の士官学校・海軍兵学校で学んだ山本氏は、在学時に次のような言葉を残しています。

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自から助くるが一番の助(たすけ)である。Self help is the best helpなる格言を守り、汝自身の力に多く依頼せられよ。何事も人によって、大成するものにあらず。
(反町栄一『人間・山本五十六』より)
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写真/アフロ

 意味としては「自分で自分を助ける……という自助の精神を持たなければならない。自分の足で立ち、自分の頭で考え、自分の力で切り抜けることが大切。何でも他者に頼っているようでは大成できない」といったところ。
 これは、山本氏が自身の甥に宛ててしたためた手紙からの一節です。当時、山本氏は20歳そこそこ。早くも大物の風格を漂わせていたことがわかります。ちなみに山本氏は、屈指のエリート養成機関だった海軍兵学校に200名中2番目の成績で入学し、192名中11番目の成績で卒業しています。
 さて、この発言からもうかがい知ることができるように、山本氏は後進を教え導くことに対して、常に真摯であり続けた人物でした。それが、リーダーという役割を担う者の責務である、という強く自覚があったのでしょう。
 自立した大人とは何か。よき社会人として、組織人として、備えておかなければならない素養とは何か。そうした問いに答えてくれる山本氏の言葉は、現代においても色褪せることなく私たちの心に響いてくるものばかりです。
 たとえば、次のような発言があります。

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人はみな、それぞれ与へられた天職がある。職分を如何に巧みに処理するかによって、その人の値打ちがきまる。何事に直面しても工夫し啓発して行く心掛が必要である。
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 海軍大臣や内閣総理大臣を歴任した海軍大将の米内光政氏は、著作『常在戦場』のなかで、山本氏が後輩に向けて語ったものとして、この言葉を紹介しています。
 人にはそれぞれ得手・不得手、向き・不向きがあるもの。上役は部下の個性を見極めて能力を引き出し、部下は上役から与えられた仕事を責任持って遂行していく。その好循環をいかに生み出していけるかが、組織を効果的に機能させる要点であり、ひいては人としての真価が問われる事柄なのだ、といった具合です。そして、たとえ苦境に立たされたとしても、創意工夫を怠らず、自分を高めていこうという意識があれば乗り越えていける、と説いています。なお、米内氏の解説によれば、「巧みに処理」とは、単に「要領よくこなす」という意味ではなく「自分の仕事に誠実に取り組み、きちんとやり遂げること」を指しているとか。

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