強軍化を進める習近平国家主席。しかし、先鋭化のあおりで大リストラした軍部からの批判も……。

「五輪9年ジンクス」という体制崩壊の予兆

 中国共産党は五年ごとに党大会を開く。そのとき、指導者の交代、あるいは継続の承認が行われる。国家指導者はだいたい二期一〇年が慣例であり、その慣例に従えば二〇一七年に総書記、国家主席の交代は行われない。習近平政権は継続するはずである。だが、今の習近平政権の激しすぎる権力闘争と執政ぶりを見ていると、この慣例が必ずしも守られるとは思えないのだ。

 そう考える根拠についてはこの本で後に語っていくとして、いわゆる〝五輪9年ジンクス〞というものも頭をかすめるのである。専制国家で五輪を開催すると、その九年前後で体制崩壊が起こる、という都市伝説である。

 たとえば、一九三六年のベルリン五輪の九年後の一九四五年にナチスが崩壊。一九八〇年のモスクワ五輪の九年後に東西冷戦構造が崩壊し、一九九一年に旧ソ連が解体。一九八四年のサラエボ五輪の八年後の一九九二年にユーゴスラビア社会主義連邦が解体。一九八八年のソウル五輪は最後の軍人出身大統領・盧泰愚(のてう)政権下で行われたが、続く文民大統領・金永三政権が軍内派閥をつぶし軍事政権残滓(ざんし)を徹底排除して一九九七年に元民主化運動家の金大中政権という純然たる民主主義政権が誕生するのも、五輪後九年目である。きっちり九年というわけでもないが、たしかに九年前後に開催国で体制が転換しているところが多い。

 五輪という平和と自由、民主を象徴するような国際的スポーツ大イベントが開催されると、多くの海外観光客が専制国家を訪れることになり、その民間交流の結果、大衆が民主主義的な普遍的価値観に目覚めはじめる。その一方で、五輪運営にかかった莫大な費用のツケによって財政が悪化し、政権の弱体化が起きてしまい、体制の転換が起こりやすい、という理屈らしい。

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