◆囲碁や将棋でAI研究が進んだ理由

三浦弘行九段(42)による、スマートフォンの将棋ソフトをつかった将棋の試合中の「不正疑惑」が浮上しており、真相について様々な憶測が飛んでいます。

最近の将棋では、プロ棋士vsコンピュータ棋士による電王戦が行われ、囲碁でも度々コンピュータと人間が対戦するなど、AIと将棋・囲碁は切り離せないものになっています。

 

 なぜ、将棋・囲碁において、コンピューターによる対戦の研究が進んできたのでしょうか。

 京都大学教授、斉藤康己著の『アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか』より抜粋して紹介します。

 

 ゲームプログラミングの研究がAIの研究と同じぐらい古いのは、初期の古典的なAIにとってゲームが格好の研究材料だったからです。その理由をいくつか見ておきましょう。

 まず、ゲームはそのルールが明確で、不確かな要素が入り込む余地がありません。ブリッジや麻雀など「不完全情報ゲーム」と呼ばれるジャンルのゲームではすべての情報がすべてのプレイヤに開示されているという状況ではないので、その意味での不確かさや、確率に頼らなければならない部分が必ず出てきてしまいます。それに対して、チェス、将棋、囲碁などの「完全情報ゲーム」では、盤面は目の前にあります。お互いが何をしたか、その結果、現在は局面がどういう状況かは一目瞭然です。これがまず計算機プログラムでの扱いを容易にしてくれます。

 

 さらにこれらのゲームでは勝敗が明確で、人間と対戦した場合でも勝ち負けがはっきりします。プログラムの強さを客観的に測りやすい、つまりプログラムの良し悪しを評価しやすいというのが二つ目のメリットです。勝敗に基づくレーティングという方法があり、人もプログラムも同じスケールの上で強さを数字で表すことができます。

 ゲームプログラムの研究、特にチェスプログラムの研究は、AI研究の「ショウジョウバエ」だと言われたこともありました。これはイギリスのAIやゲームの研究者であったミッキー(Donald Michie)の言葉です。ショウジョウバエは遺伝学の分野を加速するのに役立ちました。

 なぜならば、ショウジョウバエは卵が孵化してから2週間で大人となり次の世代の卵を産んでくれるからです。つまり、遺伝による変化を短時間で観測できる格好の実験材料だったわけです。

 同じように、ゲームはどちらかといえばおもちゃの世界に属する領域でしたが、局面の認識、認識した結果に基づく推論、さまざまな作戦(プラン)の構築と変更、さらには相手のモデルなどと当時人工知能が課題としていた多くのテーマを含んでいて魅力的に見えていました。

 それで、多くの先達たちがゲーム研究にのめり込んだのです。

斉藤康己著の『アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか』より引用>