TPP反対派の主張には、いくつかの争点があるが、農業問題=食の問題から反対するのが、『地産地消の生き方』(ベスト新書)を上梓した島﨑治道氏だ。
 なかでも、食の国際化が紛争や戦争の火種であるという氏の主張をまとめてみた。
 
 

◆食料輸入国が
戦争への火種となっている実例

 TPP反対派の主張には、いくつかの争点があるが、農業問題=食の問題から反対するのが、『地産地消の生き方』(ベスト新書)を上梓した島﨑治道氏だ。
 なかでも、食の国際化が紛争や戦争の火種であるという氏の主張をまとめてみた。

『「食の国際化」が戦争への導火線なった最近の例として〝アラブの春〟があります。2009年にロシアやウクライナの小麦などの穀物類の生産量が干ばつにより、減産を余儀なくされました。
 それを受けて欧米やロシアなどより穀物を輸入していた、エジプト、チュニジア、リビアなどの穀物類は高騰し、主食であるパンを国民が買うことのできない価格にまで跳ね上がりました。
 それにあわせて、長期にわたる強権体制により生じた一般国民と権力者との経済格差に対し、国民が権力者に不満を爆発させた内戦が、民主化運動の「アラブの春」なのです。
 発端は、チュニジアの失業青年が、野菜の路上販売を取り締まる警察に抗議して、焼身自殺を図ったことであると報道されていることからも、食料不足が火種となったことは明らかです。
 当時2009年度のチュニジアの穀物自給率は61%で、人口は約1030万人です。輸入が滞った場合、数値上は約400万人分の穀物不足が発生したことになり、権力者の配分によって、より多くの人々が飢えに直面したものと思われます。
 その後、2011年にエジプトのカイロを中心に、パンの高騰に端を発した民衆の大規模なデモが、大統領の辞任を求めました。軍の離反もあって、同年2月には30年に及ぶムバラク独裁体制に終止符が打たれました。
 2009年度のエジプトの穀物自給率は67%で、人口は約8300万人です。輸入が滞った場合、数値上では約2640万人分の穀物不足が発生したことになります。 
 さらに、リビアではデモの鎮圧が内戦へと発展しましたが、NATO(北大西洋条約機構)の軍事介入もあり、2011年8月に40年にわたるカダフィー政権が崩壊しました。2009年度のリビアの穀物自給率は7%で、人口は約640万人です。輸入が停止した状態になると約600万人の国民が飢えに苦しんだことになります。
 「アラブの春」は、その他のアラブ諸国にも飛び火しましたが、各国の民主化運動には共通する背景があります。
 それは、食料不足による食料価格の高騰です。

 さて、2014年度のわが国の食料自給率は29%です。わが国の経済格差も徐々に広がっていて「アラブの春」を対岸の火災視することはできない状況になっているのです』