習近平国家主席(左)と李克強首相(右)。権力闘争および経済政策の違いから反目しあっているといわれている。

人民元の暴落はもうすぐそこだ

 習近平が自分が政権トップの座にある間に人民元をSDRに加盟させることは、人民元の国際通貨への第一歩であり、大きな目標であった。このため、習近平は人民元高をずっと誘導し、2015年11月、IMFは人民元のSDR入りを認め、2016年に人民元はSDR入りを果たす。

 中国の予想では、この人民元SDR加入後、人民元決済や元建て債券発行が急速に広がり、AIIBの資金調達も順調となり、中国は各国への投資を人民元で行い、人民元経済圏を拡大していき、やがて米国のドル基軸に挑戦する覇権通貨となる。

 だが人民元のSDR入りはリスクもある。人民元の変動為替相場制への移行の圧力となり、中国の金融市場の完全なる自由化時代をもたらす。ドルにペッグされ、実際の経済実力に比して元高に誘導されていた人民元は自由化が進むにつれて下落し、人民元資産の流出が加速し、中国経済の空洞化が進むだろう。

 中国政府は、さらに大量の人民元を刷るだろうが、それがさらに元安を誘発し、人民元価値は地に落ち、ドル建てや香港建ての債務を抱えている中国企業はいよいよ追い込まれるかもしれない。

 こうした、二つの人民元に対する可能性とリスクの間で、やはり政策のブレがある。まず人民元安の容認派と、政府によるコントロールをより厳格にして人民元の暴落を阻止するという意見の対立がある。

 2015年8月11日、ずっと元高誘導されていた人民元の対ドル売買での基準値をいきなり2%近く切り下げ、その翌日、翌々日と切り下げを行い3日で4.6%の切り下げを行ったことがあった。このとき、国際社会は動揺し、中国にこれ以上切り下げないようにプレッシャーをかけた。このときの切り下げ政策の狙いは、急激に悪化した中国経済の浮揚策として、1994年に朱鎔基内閣が行った人民元大幅切り下げ政策にならったという見方がある。

次のページ 英国のEU離脱による欧州金融の不安定化、中国の資金流出の加速で、一帯一路構想もあやうい