どんなことでも部下の失敗の責任は長官にある。
下手なところがあったらもう一度使う。
そうすれば必ず立派にし遂げるだろう。
──山本五十六

写真/アフロ

 過去3回でも紹介してきたとおり、山本五十六氏はよきリーダーとして、よき年長者として、よき社会人として、身に付けておきたい資質を説くような発言を数多く残しました。
 そうした山本氏の言葉の根底にあるのは、人という生き物の本質や限界を捉え、極端に悲観的にも楽観的にもならず、冷静に見極める姿勢です。そのうえで、こと人材育成については、相手の美質に着目して、肯定していく姿勢を貫いていました。

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人は神ではない。 誤りをするというところに人間味がある。
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 相手のできないこと、足らない点をあげつらうのは簡単です。しかし、否定を前提にして物事に臨んでも、いいことはありません。そもそも人間とは、不完全な存在。間違うこともあれば、迷うこともある。人を育てるときには、それを十分に理解したうえで接することが大切……といったところでしょうか。否定ではなく、肯定。すべてはそこから始まるというわけです。
 同じような主旨の言説は、他にもあります。

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人は誰でも負い目を持っている。それを克服しようとして進歩するものなのだ。
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 人が何かしらの問題や課題を乗り越えるためには、一方で自分の至らない点を把握し、受け入れる必要があります。不十分な自分を認識するからこそ、それを克服するにはどうすればよいかを真剣に考えられるようになるもの。上に立つ者は、下の者の克己心を上手に引き出し、よい方向に導いていかなければならない、という具合です。上記の山本氏の発言には、人間の弱さを肯定したうえで親身に見守るような、深い愛情が溢れています。

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