アメリカ大統領選に目が向いているうちに、日本では、TPP承認案、関連法案が衆議院を通過し、参議院の審議に入った。
 ここで、農業問題のエキスパートとして知られる、島﨑治道氏(77歳)、元法政大学大学院「食と農」研究所・副所長が、TPPや「食」問題、日本の農業について考える、最後のチャンスだとして、『地産地消の生き方』(ベスト新書)を上梓したので、その内容を追いかけてみた。
 

◆すべての争いは「食」から始まる。
食料は市場経済には、
もっとも馴染まない!

 

『政府や大企業のリーダーは「効率の良い経済で稼いだお金で、安い輸入食料を買えばよい」と言っています。
 わが国を農地もない、農民もいない、食料生産のできない国にしようとしているのでしょうか。その上、1000兆円余の負債を抱えたまま、次世代に先送りしようとしています。 
 食料は外国に委ね、国の負債は次世代へと、すべてを他人まかせの「依存」で、日本の未来はあるのでしょうか。
 わが国はTPPに合意し、ニュージーランドのオークランドで協定に署名しました。TPPが発効され、わが国が何の対策も行わなければ、食料自給率は13%に低下すると、農水省が発表した『TPPが日本の農業・食品製造業等に及ぼす影響』のなかでも述べています。
 今こそ、TPP上陸に当たり、わが国の「食」を防衛することが、第一優先の時を迎えています。


◆そもそも食料は、文明が造り出した
 便利な品々とは対立関係にある

 市場が価格を決める市場経済は、文明が造り出した便利な品々を基本として、利益を目的に成立しています。
 利益面だけでいえば、便利な品々の場合は、原価のかかっていない粗製濫造の商品であっても買い手が納得していれば、交換価値は成立し、売り手は大きな利益を得ることができます。
 しかし、〝食=命〟の食料と消費者との関係は、消費者にとって食料の安定した確保と同時に、安全であることが何よりも優先されます。
 
 例えば、スマートフォンや新型自動車が売り切れて買えなくても、一か月後に入手できれば、命に関わることはありません。
 しかし、主食のコメやムギが、必要とする日より一か月後でなければ入手できない事態になれば、命に関わる大問題です。
 食料価格は、需給関係によって決定されるため、高額な食料だからといって、安全とは限りません。高額な食料であっても、身体に悪い食料であれば、高い買い物をした上に健康を損ねることになり、お金では換算できない命に関わる代償を支払うことになります。

 食料は、便利な品々の交換価値とは異なり、資本の論理は通用しないため、大資本による資本の論理に組み込まれないよう峻別する必要があります。
 そして、その資本の論理に組み込まれない経済活動として、『地産地消』があります。『地産地消』は、生産者と消費者が一体となって、信頼関係を基調に消費者を守る唯一のしくみです。
 

 

◆「食の地域化vs国際化」

「食の地域化vs国際化」は、平和か戦争かの道を辿ることを意味しています。究極の「食の国際化」が『TPP』であり、究極の「食の地域化」が『地産地

 

消』です。
「食の地域化」、すなわち『地産地消』を構築して、豊かな地域社会を形成し、活力ある国づくりをするか。「食の国際化」を推進して、悲惨な戦争や内戦への火種を残すか。そのどちらの道を選ぶかのイニシアチブを握っているのは、地域社会で共に暮らす人々です。決して政治家でも、大企業のリーダーでもありません。
 〝あなた作る人、わたし食べる人〟という「食」の分業化は、幻想にすぎません。もし、お金を支払えば、食料は買えるものと考えているのであれば、お金を支払えなくなった時点で、飢えてしまいます。また、食料そのものがなかった場合には、たとえお金があったとしても最悪の事態に陥ることになります。