世界を揺るがす出来事が起こりつつある。

その震源地はいまや米国と中国が有力候補ではないか。

米国では年明け早々にはトランプ政権が誕生する。

そして、習近平政権が率いる中国は「チャイナリスク2017」と呼ばれるいくつもの時限爆弾を抱えている。容赦ない権力闘争、米国や日本を巻き込んだ南シナ海・東シナ海問題、軍事クーデターの噂、経済崩壊の足音……。

中国のドナルド・トランプと呼ばれ、政権中枢までをも巻き込んだ権力闘争事件が今年あったのをご存じだろうか?

その渦中にあった人物が、任志強(にんしきょう)という名の元実業家。

一体彼はどんな人物だったのか?

また「任志強事件」といわれた事件の顛末とは?

中国専門ジャーナリスト・福島香織が「中国のドナルド・トランプ」と呼ばれる人物の正体と事件の顛末について語る。

中国のドナルド・トランプと言われる任志強。

中国のドナルド・トランプといわれた任志強

 任志強(にんしきょう)という人物は中国において、異色の人物である。

 一九五一年山東省生まれ。父親は元商業部副部長まで務めた高級官僚・任泉生で太子党に属する。文革中は陝西省延安県に下放され、後に軍に入隊。八一年に退役すると、実業家としての頭角を現した。一度汚職で拘束されたが、無罪として釈放された経験もある。最終的には不動産大手華遠集団の総裁まで務めあげ、二〇一四年に企業家から足を洗った。

 中国不動産協会副会長などの役職を務める不動産業界のドンであり、北京市政治協商委員[市議に相当]、北京市西城区人民代表(区議に相当)。二〇一三年『野心優雅』と題する回顧録を出版。その回顧録で、中央規律検査委員会トップの王岐山と幼なじみで、任志強が中学二年生のころ、王岐山が家庭教師をして以来の親友関係が続いていることを明らかにしている。王岐山は夜中に任志強に電話をかけてきて、長話をする、そういう親密な関係という。

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