わが国の総理大臣、安倍晋三。

トランプ勝利はアクシデントではない

 2016年11月8日、アメリカ大統領選で共和党の実業家ドナルド・トランプが勝利した。

 大方の予測を裏切った結果だった。株価や為替相場は乱高下し、わが国の政界にも激震が走った。こういう非常時にはいろいろなものが見えてくるものだ。

 

 民主党のヒラリー・クリントン上院議員の勝利を見込んでいた総理の安倍晋三は、大統領選の開票終盤、「話が違う」と 外務省にいら立ちをぶつけたという。

 安倍はヒラリー勝利を前提に動いていた。9月の訪米では、ヒラリーとだけ会談。トランプを無視したわけで相当気まずかったのだろう。

 もちろん、トランプとのパイプをきちんと確保してこなかった外務省は悪い。多くのメディアも外務省の失態と非難した。

 

 しかし本質的な問題は、トランプが勝利した後も、安倍が目の前で発生している事態をまったく理解していなかったことだ。

 翌9日、安倍はトランプに「(日米両国は)普遍的価値の絆で固く結ばれた揺るぎない同盟国」「21世紀においては、日米同盟は、国際社会が直面する課題に互いに協力して貢献していく『希望の同盟』であり、トランプ次期大統領と手を携えて、世界の直面する諸課題に共に取り組んでいきたいと思います」などと祝辞を送っている。

 祝辞とはいえ、これにはトランプも苦笑するしかなかったのではないか。

 なぜなら、トランプの勝利により否定されたのは「普遍的価値」という発想であるからだ。

 アメリカは「世界の直面する諸課題」に積極的に取り組まないと意思表明を行なったのである。

 

 これは今に始まった話ではない。アメリカは世界中に「普遍的価値」を押し付けるというネオコン路線、グローバリズム路線に疲れ果て、世界の警察からの撤退を匂わせてきた。

 要するに、トランプ勝利はアクシデントではない。イギリスのEU離脱も含めて、大きな流れの延長線上にある。アメリカが内側に引っ込み、戦争をしなくなると、世界のパワーバランス、カネの流れも変わる。

 にもかかわらず、安倍は祝辞で「世界経済の原動力であるアジア太平洋地域の安定は、米国に平和と繁栄をもたらすものです」などと相変わらず呑気なことを述べている。

 だが実際には、「アジアに米国の軍隊を出すことが、本当に米国の利益につながるのか?」という不信感がトランプの票につながっているのである。

 

 つまり、安倍には世界がまったく見えていない。それ以前に、日本も見えていない。

 11月10日には衆院でTPPを強行採決し、しまいにはトランプにTPPの議会承認を促すなどと言い出した。さらには「我が国がTPPを承認すれば、保護主義の蔓延を食い止める力になる」と発言。誰目線なのかは知らないが、国益って言葉を知らないんですかね。このすっとこどっこいは。

 トランプ勝利から導き出される結論は、アメリカの世界覇権を前提として、TPPや安保法制など頓珍漢なことを繰り返してきた安倍自民党政権がついに追い詰められたということである。

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