角界屈指の“業師”の再挑戦に、
熱い拍手と声援が注がれる

 

 横綱白鵬が通算1000勝を達成し、大関豪栄道も力強い相撲で綱取りにばく進中。関脇髙安も大関取りが懸かるなど、現在、開催中の11月場所は見どころ満載。今年の九州は例年以上に土俵が熱い。人気力士の活躍で会場の福岡国際センター館内は幕内の取組になると華やいだ雰囲気に包まれる。かつてはそんな“檜舞台”でしばしば“大物キラー”ぶりを発揮し、スポットライトを浴びていた角界屈指の業師は現在、観客もまだまばらな時間帯に土俵に上がり、幕内復帰を目指している。


 今年7月場所前の稽古で左足アキレス腱を断裂した豊ノ島は、2場所連続全休で今場所の番付は幕下7枚目。6年前の11月場所は平幕で14勝を挙げ、横綱白鵬との優勝決定戦にも進出した実力者だが、今は関取の象徴である大銀杏からちょんまげ姿になり、まわしは稽古と兼用の黒まわし。今場所2日目、12年半ぶりに幕下の土俵に上がると、客席からは役力士なみの大きな拍手と歓声が沸き上がった。“33歳の若い衆”に注がれる視線は皆、一様に温かい。この日はまだ関取の経験がない新鋭に攻め込まれる場面もあったが、最後は押し出して復帰後、初勝利を飾った。


「泣きはしなかったけど、こみ上げてくるものがあった。今の今までずっと不安だった。ホッとしています」
 力士生命を左右する大ケガであったが「引退は考えていなかった」という。関取から陥落したため、給料はゼロ。家族を抱える身としては厳しい現実だが「生活のことは気にしないで、一番大好きな相撲を悔いの無いようにやってください」という夫人の言葉が支えになっている。同じくアキレス腱断裂からわずか4カ月で先場所、復帰を果たし十両で勝ち越した関取最年長の安美錦からは「思い切っていけ。思ったより全然、大丈夫だから」というアドバイスももらった。


 幕下以下は1場所7番。全勝なら1場所で関取に戻れたが、2番目の相撲となった4日目は黒星を喫し、十両復帰は早くても来年3月場所となりそうだ。患部はまだ頑丈にテーピングが巻かれている。「納得いくような相撲を取りたい」。相撲ファンも同じ思いで見守っている。