野菜の高騰により、学校給食を中止するケースが続いている。国内の自然災害でこれだけの影響を受けるとしたら、今後、TPPなどにより輸入依存度が高まった時、激変する世界情勢のなかで安定した食料の供給など到底、無理だ。と、警告を鳴らすのが、『「地産地消」の生き方』の著者、島﨑治道氏(元法政大学大学院「食と農」研究所副所長)だ。
 

◆海外輸入食品は果たして安全か? 
 学校給食は本当に大丈夫なのか?

 学校給食について言う前に、食の安全がいかに大切であるか、単純に「効率のよい経済で稼いだお金で、安い輸入材量を買えばよい」という経済活動とは、峻別しなくてはならないことを考えてほしいと思います。

 ついつい忘れがちなのですが、最近の産地偽装問題以前にも、日本を脅かした食の問題は、数々ありました。

 2001年に日本で最初のBSE(牛海綿状脳症)の感染牛が発見され、2006年時点で32頭の感染牛が確認されたのは、大きな社会問題となりました。
 2004年には、鳥インフルエンザが発生し、山口県の養鶏場で6千羽が急死、3万羽が殺処分されました。同年、京都の養鶏場では20万羽の鶏が家畜伝染病予防法により殺処分されました。さらに兵庫、岡山へも広がり、2005年には茨城県で2万5千羽が殺処分されています。
 2010年に発症した「口蹄疫事件」は、宮崎県内の5市・6町で口蹄疫ウィルスに感染し、牛を中心とする家畜約29万頭が殺処分されるという、家畜農家に甚大な被害をもたらした事件です。
 もっとも最近では、2014年、中国の「上海福喜食品」の内情を2か月間にわたり撮影した、上海テレビ局の「東方衛視」の映像が、わが国の茶の間に放映されました。
 作業員が期限切れの鶏肉や、床に落ちた鶏肉を拾い上げて生産ラインに戻したり、青カビが生えた牛肉を使用する場面など、生々しいテレビ映像でした。

 問題は、この食品会社から、不衛生な食品を輸入し、わが国の多くの消費者が長年にわたり、食べていたという事実です。

 以上の食品事件を振り返っただけでも、「食」の問題と、その安全性がいかに大事であるかが分かると思います。

 さて、本題の学校給食についてですが、学校給食には次のような方式があることをご存じでしょうか?

①自校方式(単独調理場方式):一校が独立して独自の給食をつくるシステム。学校内に給食施設があり、学内に栄養士と調理員がいます。

②センター方式(共同調理場方式):何校分かをまとめてつくり、各学校に運ぶ給食。この方式は人件費、施設費、光熱費などが自校方式に比較して節約できます。

③業者委託方式:施設と栄養士は公費、人件費は業者委託。したがって、給食メニューも効率優先主義になります。

④PF1方式:施設を民間のコンペで決定、管理は行政、運営は一般的に民間が行う方式です。

 学校や自治体によって多少の違いはあっても自立した給食から、学校以外の企業に依存する傾向が高くなっているのは間違いありません。

 学校から民間へ移行していく方向は、政治に起因しています。小泉構造改革で「自治体の民間化」という自由競争化の方向が示された後、民主党に政権が変わった際に、「事業仕分け」によって、学校給食の流れは自校方式から委託方式に確実に移行しています。

 この学校給食のアウトソーシング化で発生するマイナス面は、まず委託を受けた業者は、当然のことですが利益の確保が優先されるため、食材は安い輸入食料によって賄われることになります。

 また、人件費を軽減するために、例えば、野菜などのカットも手で切ることによって、食物繊維を傷めない調理で、みずみずしい野菜が保たれるという手仕事から、機械カットが主流となります。

 なお、小・中学校の自校方式による実施学校数は、2008年の文科省の統計しか見つからなかったのですが、全体の43.4%と発表しています。もちろん、この7年間で自校方式の学校が減少しているのは明らかです。

 学校給食法が制定されたのは、1954年に遡ります。これにより学校給食の主食が、ごはんからパンに替わりました。当然、この経過は当時の政治経済が根底にあることは、誰もが知るところでしょう。
 当時の洋式の食生活に慣れた小学生は60代になっているはずです。そして、いわゆる生活習慣病に悩まされている人がいかに多いかを言う時、こうした国の政策が大きく影響していることは間違いありません。

 そして、現在の学校給食を見た時、自分たちの子どもに対し、果たして国任せにしてよいものかどうか、もう一度考えるべきではないでしょうか。
 先ほども触れたように、学校給食における、海外の輸入食品の使用率は、年々、増加の傾向にあります。「食」を他国に丸投げするのは、国民の命を引き渡すようなものです。

 現在、アメリカ大統領選を終え、TPPの発動も揺れ動いているようです。こうした政治や経済の動きに、「食」の問題を合わせてはいけないというのが、『地産地消』の考えなのです。