11月8日、アメリカ合衆国の大統領選挙の結果は、大勢の予測に反して共和党・トランプ候補の勝利に終わりました。当日トランプ優勢が伝わると日本の株式市場はパニックに陥り、919円ほどドンと値を下げましたね。もっとも、翌日にはそれ以上に戻してましたが。こういう相場は大衆心理が大きいのか、あるいはそれを利用する投機筋の演出が大きいのか。部外者にはさっぱり分かりません。

 ところでこの日は、他の相場でも大きく値が動いたものがいろいろありました。その中でも注目したいのが、金(ゴールド)先物市場。一気に63.8ドルも騰げました。政治や経済の先行きが見通せないとき、人々が必ず逃げるのが金(ゴールド)。逆に言えば、この相場が騰がる時は近い内に何か騒動が起こると考えても良いのかも。

 今から402年前の慶長19年秋(現在の暦で1614年晩秋頃)、東北地域で金(ゴールド)高騰。奥州は古来から砂金の産地だったが、この時
「砂金五匁一両に永楽銭五貫五百文より六貫ばかりまで、前代にこれなき高値段に、金高値に成る」(「祐清私記」二木謙一著、中公新書『大坂の陣』より)
と、豊富にあるはずの金(ゴールド)が値上がりした事が記録されている。

 あいにくこれと比較するピンポイントの史料が無いのだが、砂金5匁(19g弱)を金1両としたのは鎌倉時代以来の取り決めで、それが銭5500文~6000文の価格帯になったというのは、10年前の慶長9年(1604)に信濃上田で金1両が銀48匁、銭に換算して4000文ほどだった事を考えるとほぼ1.5倍の上昇率だ。さらに元和1年(1615)になると、金の値段は1両13000文以上には値上っている。

 大坂の陣が始まる以前から、幕府軍は苦戦するのではないかという予想が世間に流れ、冬の陣進行中も、幕府軍敗北という噂で江戸の町が大騒ぎになるなど、勝敗のゆくえについて国中に不安が充満していた。

 夏の陣は堀も城壁も失った大坂方が圧倒的不利だったが、それでも幕府軍勝利のあとの政策がどのように打ち出されるのか、不確定要素が尽きる事はなく、それが金(ゴールド)の高騰につながったのだろう。

「困ったときの金(きん)頼み」
という言葉まである様に、神様よりもあてになる金(ゴールド)。いざというとき、金(ゴールド)に逃げるのは、今も昔も和も洋も変わらない鉄則なのだ。