2018年3月末での廃止が決まった広島県三次(みよし)と島根県江津(ごうつ)を結ぶJR三江(さんこう)線。乗らずに終わってしまうのも悔しいので、乗りに行くことにした。といっても、廃止が決まると、閑散とした列車は超満員になるのが最近の傾向だ。それで、青春18きっぷなど格安きっぷが使えない時期をわざわざ選んで、10月下旬に現地へ向かった。

 

 三江線の列車ダイヤは超閑散としていて、明るい時間に乗り通そうとすると、江津、朝6時発、三次発5時44分、9時57分発の三つの選択肢しかない。早朝発車は寝坊をしそうなので、無難な三次発の遅い列車にした。これなら、広島発でも間に合うけれど、万一芸備線の列車が遅れて乗り継げなかったら悔しいので、わざわざ三次市内に泊まって、万全を期した。とは言え、第一希望の宿に泊まれなかったのは、三江線に乗るための客が多いのか、そもそも宿泊施設の容量が少ないのか・・・・。

 

三江線のラッピング車両

 朝一番に江津を出て列車が三次に到着。これが、そのまま折り返す。単行(1両だけ)のディーゼルカーかと思っていたら、意外にも2両編成で、前の1両は石見神楽のラッピング車両だった。発車30分前に乗りこんだせいか、思ったほど客は多くなく、進行方向窓側のボックス席を確保した。それでも、発車時間が近付くとそこそこ乗客はいて、「その筋」の人(鉄道ファン)、それと広島のテレビ局スタッフが取材のため乗っていて、満席ではないもののかなりの乗車率だった。

前面展望(江の川に沿って)

 列車は、三次を定刻に発車。馬洗川を渡る時、左手に江の川との合流点が見える。桜の名所尾関山(おぜきやま)を通り、初めて江の川を渡る。これより、3時間半ほど、延々と江の川に沿って走るのである。

神楽愛称駅名、八幡(正式の駅名は石見川本)

 長谷(ながたに)駅以外は各駅に丹念に停まっていく。いずれの駅にも通常の駅名標の他、石見神楽の演目名を愛称としたイラスト入りの駅名標を立てているのが目を惹く。暴れ川とも言われ、たびたび水害を引き起こした江の川沿いは、手つかずの自然が残る。川を渡る橋は多くなく、ところどころに渡し舟が見られる。線路は律儀に川に沿ってうねるように走る。そのため、三次から江津まで、直線距離なら60kmほどなのに、三江線の営業キロは108.1km。乗客が少ないのは、過疎地を走る上に、速達列車を走らせる意義がなく、通り抜ける長距離客が少ないといった事情もあるようだ。人家も少なく、春の桜や秋の紅葉など車窓は見ごたえがありそうだが、いかんせん大都会から遠すぎる。そんな思いを超越するように、列車は我関せずとばかり悠長に走っていく。並行する道路を走るクルマにどんどん抜かれていくのは悔しい。

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