南シナ海問題は火を噴くのか? トランプを迎え撃つ習近平国家主席の胸中やいかに。

今後、中米関係はどうなるのだろう。日本にとっての最悪のシナリオから考えてみよう。

米国グローバリズムが衰退し、トランプ政権がアメリカファーストの国内改革に勢力を集中することで、米国のアジアリバランス政策が後退し、南シナ海での中米関係の緊張はいったん緩和する。もし、中国が冷静な外交を選択すれば、フィリピンとの駆け引きもあって、スカボロー礁埋め立てなどもとりあえず棚上げし、南シナ海における米国への挑発を控えるだろうが、その一方で、習近平政権が初期に試みていた日米離反政策を復活させるかもしれない。東シナ海の尖閣諸島海域で中国が踏み込んだ挑発行為を行ったとき、トランプ政権がどのような対応をするのかを確かめようとするかもしれない。トランプ政権の在日駐留米軍の駐留費負担増の主張に対して、日本はどのような判断を行うのか、その対応や覚悟がやはり問われるだろう。

中米の経済関係はいったんはかなり冷え込むと考えられている。トランプ政権がTPPを放棄するのは中国にとって歓迎すべきことだが、中米双方投資協定(BIT)の締結も先に延びるかもしれない。トランプ政権が選挙運動中に公言したように中国を為替操作国と認定すれば、中国資本の流出が加速し、対米ドル暴落が始まる可能性がある。

中国輸入品関税45パーセント政策をもし実際にやるとなったら、中国経済への打撃は少なくない。モルガン・スタンレーの試算によれば、中国の輸出総額は13%減、米国の中国総輸出額に占める比率は現在の21%から17%に減少するという。

しかしながら、中国当局側は、先にも述べたようにこの経済的打撃は比較的短期間で済むと楽観視している。その理由としては、実際のところ人民元暴落はトランプ政権の望む中国対米輸出を抑制させたいという方向性と逆の効果を招きかねず、むしろ人民元を安定させたほうが米国経済にとってプラスになると、いずれ判断するだろうという見方がある。

また、輸出関税引き上げについても、中国自身が対米輸出を減少させ、アジアやアフリカへの輸出拡大に振り替えていこうという方針をもともと持っている。そのほうが中国の総貿易黒字は上昇すると考えている。モルガン・スタンレーの試算でも、実は中国が対米輸出を減らすことで損なう利益は5%ほどでさほど高くないとする。

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