台湾には日本のアニメ、漫画、フィギュア、同人誌……などのオタク文化が根強く浸透しており、台北にはメイド喫茶まで存在する。しかし、果たして日本のメイド喫茶と同じように萌えることはできるのか? 実際に確かめてみることにした。

萌姫女僕珈琲館の店内に貼られていたポスター

 まずやってきたのは西門にあるメイド喫茶「萌姫女僕珈琲館」。入り口で台湾人のメイドに中国語で出迎えられるが、僕が日本人とわかると、
「お帰りなさいませ、ご主人様」
 と流暢な日本語で挨拶する。彼女の名前は暖炉ちゃん。僕を窓際の席に通し、テーブルに置かれた鈴のついたスティックを指して言う。
「注文が決まったらこの魔法のスティックで呼んでくださいね」
 ケーキ、ソフトドリンク、メイドとのチェキ撮影がセットになった「萌萌接近中(320元)」というのを注文することにした。スティックをチリンと鳴らして注文した。
 暖炉ちゃんがケーキとソフトドリンクを運んできた。彼女はケーキの皿にチョコレートソースでお絵かきをし、美味しくなるおまじないをかける。
「美味しくな~れ。萌え、萌え、チュ」
 次にメイドとのチェキ撮影。僕が楽しみにしていたのはこれだ。しかし、いっしょにチェキを撮りたいのは暖炉ちゃんではない。店内にいた別のメイドの莉娜ちゃんである。いっしょに撮影するメイドは選べないらしいが……。
 暖炉ちゃんがあみだくじの書かれたホワイトボードをもってきた。縦線は4本。ゴールの部分は手で覆い隠している。そこにメイドの名前が書かれており、そのメイドといっしょにチェキを撮ることができるのだという。
「ひとつ選んでください」
 莉娜ちゃんのもとへと辿り着く線は……。
「いちばん右だ!」
 暖炉ちゃんは僕の選んだ線を指でなぞり、右へ左へと折れながら下りていく。ゴールを隠していた手を離した。そこにあった名前は、
「あ、暖炉。私ですね」
 よし、外れた!
 暖炉ちゃんと2人でのチェキ撮影。その後、僕は150元の追加料金を払って莉娜ちゃんともチェキ撮影をして店をあとにした。
 それなりに萌えることはできたたが、まだ少し物足りない。日本のメイド喫茶を模倣した萌えではなく、台湾のメイド喫茶ならではの萌えを味わってみたいところである。

Maiden Dinerのカレーソースオムライス300元

 次にやってきたのは台北地下街にある「Maiden Diner」。ここもサービスは同じだった。オムライスを注文するとケチャップでお絵かきして美味しくなるおまじないをかけ、チェキ撮影にも応じてくれる。
この店と通路を挟んで斜め向かいにもう一軒メイド喫茶があった。店名は「Maiden School」。僕としては今回の中でいちばんの当たりはここだった。
 応対してくれたメイドの名前は緋雪ちゃん。オムライスを注文するとケチャップでお絵かきして美味しくなるおまじないをかける。
 彼女の日本語はひどくカタコトだった。福岡で台湾の楽器を演奏したときのことなどを限られた日本語の語彙で一生懸命に伝えようとしてくる。そんな彼女の姿を見ていると、ぎゅっと抱きしめて耳元で「大丈夫だよ」と囁いてあげたくなってくる。
 これぞまさに「萌え」である。しかも、日本のメイド喫茶では決して味わうことのできない種類の「萌え」である。
 緋雪ちゃんはずっと僕に付きっ切りになっていた。しばらくして僕のもとを離れるが、一枚の紙を手にしてまたすぐに戻ってくる。
 日本語の接客用語集だった。読み方を教えてほしいという。僕がそこに書かれていた「お帰りなさいませ、ご主人様」という文を読み上げると、彼女がそれをリピートする。そして、
「うーん、難しいなー」
 と言って小首を傾げ、僕をさらに萌えさせてくる。
 店内の照明が落とされ、天井のミラーボールが回転して光線を放ちはじめる。そして別のメイドが中国語の歌謡曲を歌いはじめた。歌詞の意味はわからないが、その曲調からして凍えそうなカモメを見つめながら別れた男を想っていたとかそんな感じの内容だろう。店内は一転、場末のスナックの雰囲気に包まれた。
 歌が終わると、次にじゃんけん大会がはじまる。メイド対客全員でじゃんけんし、勝者ひとりが好きなメイドといっしょに自分のスマホで写真撮影する権利を獲得できる。僕はこれに見事に勝利を収め、緋雪ちゃんといっしょに写真撮影をした。

台北地下街にはメイド喫茶の他に執事喫茶も

 台湾のメイド喫茶のシステムは日本とほとんど同じである。が、僕のようなカタコトの日本語フェチにとっては、日本のメイド喫茶以上に萌えられること請け合いなのである。