トランプ米国を迎え撃つ
習近平の外交感覚とは?《前編》
中国のグローバル化は止まらない…

 

 胡錦濤政権以前の中国と習近平政権の中国の最大の違いは、共産党執政の正当性の根拠を経済成長から軍権掌握に転換したことだと、私は思う。胡錦濤政権も軍制改革を試み、結局挫折したのだが、胡錦濤政権の目指した軍制改革の本当の狙いは党の私軍である解放軍の国軍化である。まさしくゴルバチョフが進めた軍と党の切り離しに相通ずる。

 社会主義国において、党の軍の国軍化こそ政治改革の核心であり、もっとも困難な挑戦といえるが、胡錦濤は無能といわれつつ、それに挑戦しようとした。結果は挫折したのだが。

 一方、習近平の軍制改革は党が軍をより掌握し、それによって執政党の正当性を担保しようという、一種の先祖返り、あるいは北朝鮮化といってもいい動きだ。習近平政権では政治改革は凍結され、解放軍国軍化問題は中国における八つのタブーのうちの筆頭にある[※雑誌・メディアに通達されている、触れてはいけない八つのテーマのこと。①軍の国軍化問題②三権分立③天安門事件④党・国家指導者及び家族の批判・スキャンダル⑤多党制⑥法輪功⑦民族・宗教問題⑧劉暁波。最近は劉暁波の代わりに憲政主義が入ることも]。

 この変化は中国の外交政策を大きく転換させた。江沢民、胡錦濤政権は経済成長をまず第一に考えたので、グローバル経済の発展の中で、外交をきわめて重視し、基本は多極外交、協調外交であった。江沢民は反日政策をとったが、それでも日中経済協力の黄金期を築いた。胡錦濤政権下では小泉政権の靖国神社問題や民主党政権下での尖閣諸島をめぐる対立の先鋭化などもあったが基本は対日重視政策であった。

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