ふんどし一丁で清掃活動や講演を行う男たち。一見ふざけているようにも見える彼らの行動は、日本の伝統的下着「ふんどし」のプロモーションというれっきとした企業活動だ。今年5月に誕生したばかりという、その名も「株式会社ふんどし部」。
 なぜ今、これほどまでに「ふんどし」に情熱を傾けるのか? 彼らが世の中に伝えたいこととは?同社副代表の野田貴志氏にご寄稿いただいた。

「大学院での研究をやめて、ふんどしを作って世界に売っていきます」
 そう言うと人は驚いたり、笑ったり、変にテンションが上がって盛り上がったりします。私の母の場合は、少し不安そうな顔で「体を大事に」とだけ言いました。
 私は以前、東京大学の大学院でバイオ系の研究をしていましたが、今年の春に友人と二人でふんどしの会社を起こし、学校へ行くのを完全にやめました。現在、ふんどしを作って売る、という物販ビジネスをしています。2年ほど前は土日も昼夜問わず研究室に引きこもって実験に明け暮れていましたが、ふとしたきっかけでふんどしに目覚め、まさか会社までつくることになるとは。ふんどしに出会って人生が変わり、ふんどしで仕事をするまでに至った経緯をお話ししましょう。

・人生を変えたふんどし体験

 きっかけは、2年前のとある冬の寒い日。芸術系の大学に通う友人が「日常の中の非日常を表現したい。ふんどしで街を歩きたい!」 という訳のわからないことを言ったのですが、当時私も訳のわからないことが好きだったので、謹んで参加させていただくことにしました。
 要約すると「祭りや伝統行事の中では普通に見ることができるふんどしを、何気ない日常の風景の中に投影すると、見る人はどのような反応を示し、そこに何が生まれるのか」という命題のもとに、若い男女が10名くらい群れをなしたり分離したりして、ふんどし一丁で新宿駅周辺のエリアを歩き回りその様子を観察・撮影する、という取り組みでした。
 そのアート活動の作品としての成果はひとまず置いておいて、私はその時ふんどしを初めて「穿いて」(その時は締め込まないタイプの越中ふんどしだったのでこう表現させてください)、その心地よさに感動したばかりではなく、「ふんどしで何気なく街を歩く」ということ自体に楽しさと意義を見出しました。
 誰もが分厚いコートを着ている真冬の寒空の下、ふんどし一丁で平然と歩いてくる男を見ると、人は実に様々な反応を見せてくれます。
 白目むいて驚いたり、爆笑したり、カメラを構えたり、スルーしたり、同情したり、警察を探したり……。
 「何アレ?」をはじめとして、「寒くないの?」「すごい」「大丈夫なの?」「祭りあるんだっけ?」「芸人さんかな?」「罰ゲーム?」「捕まるぞ~」「かっこいい!」「兄ちゃん元気だねえ!(ハイタッチ)」などと、つい口に出してしまう方も多いです。

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