わが国の総理大臣、安倍晋三。その隣にいるのが、国会で辻元清美に詰問され泣きべそ答弁をしたわが国の防衛大臣、稲田朋美。このふたりは南スーダンでの戦闘は「衝突」だと言い換えるなどして自衛隊を派遣することに成功。虚偽に満ちた時代を象徴するツーショットだ。

 

 

大衆社会の徒花

 

 安倍は言う。

「世界の歴史を振り返っても、一国のリーダーが判断を誤ったために国が滅びたことは何度もある」(『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』)

 そのとおりである。リーダーの責任は重い。

 民主党から自民党に変わり、少しはマシな世の中になるかと思っていたら、民主党よりタチの悪い売国活動を始めたのが安倍政権だった。憲法の恣意的な解釈、デフレ下の増税、TPP、移民政策、農協や家族制度の解体……。河野談話、村山談話を踏襲し、決着済みの日韓合意を蒸し返し、アメリカの要望どおりに国の形を変えていく。要するに、「戦後レジーム」の固定化だ。

 民主党政権時代と安倍政権時代の最大の違いは、メディアがきちんと機能していたかどうかである。

 都合のいいメディアとは食事会。

 都合の悪いメディアには嫌がらせ。

 飴と鞭というより、安倍と無知。

 普通だったら10回くらい政権がひっくり返っていないとおかしいが、今はメディアが腐っているので危ない。

 現在、安倍政権を支持しているのは、利権がある連中か、単なる反左翼の思考停止した連中(保守系論壇誌に多い)か、新自由主義を保守と勘違いしているバカか、改革幻想に踊らされた花畑だろう。戦後の幻想の平和に酔っていた「戦後民主主義者」と安倍支持者は同類である。幻想のリアルポリティクス(実態は売国)に酔っているだけで、平和ボケであることに変わりはない。

 いつの時代でもそうだが、バカは敵を間違えて取り返しがつかないことになる。今、保守および真っ当な日本人が戦わなければならないのは、民進党でも共産党でも朝日新聞でも日教組でもない。国の根幹を破壊し続ける安倍政権である。

 現在、わが国を蝕んでいるのは悪性のニヒリズムだ。

「安倍さんは大きな目的のために戦っているんだ」

「大義のためには妥協も仕方がない」

「政治家がウソをつくのは当たり前」

 本書でも述べてきたように、病はまず「言葉の扱い」に表れる。

 外傷は一瞬で気づくが、胃ガンなどの内部の病気は末期まで気づかないことがある。外敵の脅威は猿でもわかるが、内患の問題は見逃されがちだ。

 2016年8月8日に天皇陛下が「お気持ち」を表明された件に関し、官邸は不満を持ち、宮内庁長官の首をすげ替え、次長の人事も掌握した。

 不敬の一言である。

 2016年9月26日、国会で安倍は「(自衛隊員らに)心から敬意を表そうでありませんか」と呼び掛け、自民党議員は示し合わせたかのように、ほぼ総立ちで拍手を送ったという。議論の場でこうした行為が発生するのは極めて異例。どこかで見た光景だと思ったら、北朝鮮だった。

 2016年10月26日、自民党の「党・政治制度改革実行本部」は、党則で連続「二期6年まで」と制限する総裁任期について「三期9年」に引き伸ばすことを決めた。

 われわれ日本人は正気を取り戻すべきである。

 本書(『安倍でもわかる政治思想入門』)では、安倍という一個人を社会の拡大鏡として利用した。

 残念ながら、これが今の日本の現実だ。

(※適菜収著『安倍でもわかる政治思想入門』から本文抜粋)

 

著者略歴

適菜 収(てきな・おさむ)

1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチ・クリスト』を現代語訳にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(以上、講談社)、『死ぬ前に後悔しない読書術』(KKベストセラーズ)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)など著書多数。安倍晋三の正体を暴いた渾身の最新刊『安倍でもわかる政治思想入門』(KKベストセラーズ)が発売即重版。全国書店、Amazonにて好評発売中。