■トライアウトにあった結果だけじゃない壁

 連載の更新が遅れてすみません。サブロク双亮です。今回はちょっと、考えさせられたことについて書きたいと思います。
 


 少しさかのぼって11月12日。

 僕は甲子園球場にいた。いた、と言ってもグラウンドではなくスタンドだ。
 この日、甲子園球場ではプロ野球のトライアウトが行われていた。各球団のスカウトが集まり、NPB経験者でいま12球団に籍を置いていない選手が再び、NPBへの扉を開くために、その実力を披露する場所だ。

 これまで多くのメディアで紹介されてきたこともあり、スタンドはもの凄い熱気だった。聞くところによると1万人以上のファンが詰め掛けたという。プロ野球という華やかな世界に再び挑戦する、そのストーリーは多くの人の夢のストーリーでもあるのだな、と思った。

 今回、僕が甲子園に向かった理由はテレビ番組の企画のひとつで、それも愛媛マンダリンパイレーツのチームメイトが受けに行っていたからだ。その選手とは、北方悠誠と古村徹。ふたりとも、横浜ベイスターズ(現在のDeNAベイスターズ)に指名され、将来を嘱望された投手だ。

 北方投手はベイスターズに在籍した当時、ウィンターリーグで158キロを記録したこともある速球派。愛媛マンダリンパイレーツでも軽々と150キロを超す球を投げる姿に、なんども「すごいなあ……」と唸らされてきた。

 古村投手は左投げで、スライダーがいい。今シーズン26試合に登板して防御率0.80と圧倒的な結果を残してきた。

 ふたりともなんとかいいアピールをしてプロの世界へふたたび舞い戻り、活躍してほしい。そんなふうに願いながらグラウンドを見つめていた。

 投手の場合、トライアウトで投げられるのは3打席と決まっている。そして結果だけを見れば、ふたりともひとりのランナーも許さない素晴らしいピッチングだった。すごいなあ、ひとまずは良かったな……と思いながら見ていたのだけれど、ここでふと気付いた。

「あれ、これってアピールになっていないんじゃないか……」

 そう思ったのは北方投手のマウンドだ。

 3人を簡単に打ち取ったものの、その内容を見ると一人目が、初球で凡退。二人目が二球目で凡退。三人目が初球で凡退……たった4球で終わってしまったのだ。抑えた、でもアピールポイントを見せられない……そんな結果だったように思えた。実際、北方投手の最速は144キロ止まり。これまでそんなことはなかった。

 結局、ふたりにはまだプロからの声はかかっていない。高きハードル、高き夢。僕は独立リーグですらものすごいレベルだと思っていたのに、そんな中で活躍した選手でさえ翻弄をする世界。改めてプロのすごさ、そしてトライアウトという現実の難しさを感じさせられた。

 ふたりは来年も愛媛マンダリンパイレーツでプレーをする。

 そのマンダリンパイレーツは、弓岡監督が退任し、加藤コーチがアルビレックス新潟の監督になることになった。キャプテンの鶴田は引退。何度も紹介した伴ちゃんはプロを目指し、海外のリーグのテストを受けると言う。メンバーが大きく様変わりする。

 こんな言葉を聞いたことがあるだろうか。

「独立リーグは、夢を追う場所でもあり夢を諦める場所でもある」

 今年の11、12月は生まれて40年にして知った新たな世界にちょっと感傷的になったりしている。ではまた――。

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