カジノ解禁に向けた「統合型リゾート(IR)整備推進法」が自民党と日本維新の会などの賛成多数で可決・成立。果たして、カジノは本当に日本経済を復活させるのか? 『カジノ幻想』(ベスト新書)の著者で、経済学者の鳥畑与一氏がカジノの”お金の源泉”を読み解きます。

カジノのターゲットは外国人客ではない 

 

 カジノが国際観光業として活躍してくれれば……というイメージはあながち間違いではない。カジノがカニバリゼーションを回避して日本経済全体としてプラスの経済的効果をもたらすかどうかは、目的地効果と再獲得効果の程度に依存することになるからだ。米国ではカジノ顧客の「50%以上が州外からのギャンブラーでない場合は、州経済に対してはマイナスの影響を及ぼす」という指摘もされている。

 推進派は、日本におけるカジノ合法化で韓国やマカオそしてシンガポール等での日本人ギャンブラーのギャンブル消費が日本に戻ってくると主張するが、マカオとシンガポールのカジノ収益のほとんどは中国人ギャンブラーによるものである。また、日本人ギャンブラーの比率が高い韓国でも外国人専用カジノ
16カ所の収益は合計13億ドルにすぎない。日本のカジノ合法化による「再獲得効果」は予想されるカジノ収益規模の数%にすぎないと考えるべきだろう。
 結局、4・8兆円とも言われる巨大なカジノ市場がカニバリゼーションを回避しつつ成立する鍵は、シンガポールのIRがモデルとされるように外国人客をどの程度獲得できるかにかかっている。シンガポールは、外国人客にターゲットを絞り、地元市民へのカジノの広告宣伝やバス等による送迎サービスの提供を禁止し、市民からは入場料として一日券100シンガポールドル(約8000円)、年間券2000シンガポールドル(約16万円)を徴収し、かつギャンブル依存症の危険性の啓蒙活動を行うことで極力市民参加を抑制しようとしている。
 その結果、カジノ入場者における地元市民比率は25~30%に留まっているとされる。シンガポールの観光客はASEANを中心としたアジア・オセアニア地域からの観光客が85%で、日帰り客が23%を占めるように、東南アジアや中国南部からのギャンブル客の誘致に成功している。
 またマカオでは、大陸との陸続きという条件等を活かして観光客の約3分の2を中国人が占め、香港・台湾を併せれば9割が中国圏であり、日帰り客は52%にのぼる。このようにカジノ客のほとんどが国外客である場合は、カニバリゼーションを回避し、マクロ経済的にもプラスの経済的効果は発生すると言える。

 しかし、島国である日本にはシンガポール等のような地の利は乏しく、IR型カジノの顧客は圧倒的に国内客が占めると予想される。その一方で、東京と大阪は空港の利便性ゆえに中国北部のギャンブル客の獲得が有望とされる。東南アジアはシンガポール、中国南部はマカオが押さえているが、中国北部のギャンブル市場は空白地帯というのである。
 同様に、ゴールドマンサックスは東京と大阪で約1兆5000億円の収益を推計するが、顧客の3割を外国人客が占めると予想する根拠は、中国北部のギャンブラーの6割を日本のIR型カジノが獲得できるという前提である。注目すべきは、このようにアジアギャンブル市場の空白地帯の「需要」の大半を日本のカジノ市場が押さえると想定しても、東京・大阪ですら外国人ギャンブラーの消費額は3割程度と推計されていることである。したがって、地方都市のカジノにおいてはほとんどが国内顧客で占められることになると言わざるを得ない。
 仮に、「国際観光業としてのIR型カジノ」であるならば、外国人専用としてオープンして問題ないはずである。実際に2014年10月のカジノ議連の総会では外国人専用カジノとしての提案がなされたが、経営が成り立たないとして取り下げられた。国際観光業の目玉としてのカジノと言いながら、現実には外国人客の来訪が大きくは期待できず、日本人客が大半を占めることが想定されているのだ。