動物の生命活動にとって必要なのに「汚い」「臭い」といわれ、その言葉を発することすらためらわれる……。そんな忌み嫌われる存在の「糞」は肥料として欠かせないものだった。今ではただ捨てられるだけの存在になりつつあるが、エコブームの今、これを利用した製品が再び注目されている。

 

動物園へ行くと、ゾウの糞から作られた紙製品がお土産として販売されていることがある。かわいらしいデザインのレターセットやノートなど、見た目ではそれが糞から作られたとはわからない。

 

これらはスリランカで作られた「ぞうさんペーパー」からなるもので、干したゾウの糞を煮沸して繊維質を取り出し、古紙とブレンドして作られる。糞特有の臭いは感じられず、使い勝手も一般的な再生紙とほぼ変わらない。

 

巨大な体を持つゾウは排泄物の量も多く、種類や個体による違いはあるものの、1頭あたり1日で平均50~100kgもの糞を排泄する。これは、100枚以上の紙を製造できるほどの量なのだという。

 

ゾウ保護センターのあるタイでも同様に紙を製造しているが、こちらではさらに「コーヒー」まで作られている。希少価値が非常に高く、世界の名だたるコーヒーのなかでも高価で取引されるというから驚きだ。

 

このゾウの糞からできたコーヒーは「ブラックアイボリー」といわれ、ゾウが消化できなかったコーヒーの実から抽出されている。もちろん、洗浄などの工程を経ているので臭いはせず、衛生面でも問題ないそうだ。

 

 

このように、動物が食べた実を糞から取り出して作るコーヒーはほかにもあり、インドネシアの「コピ・ルアク」が知られている。こちらはジャコウネコの糞から取り出したもので、その希少価値の高さから「コーヒーの王様」といわれるほどだ。

 

ほのかな甘みと苦み、そしてコクのバランスが絶妙で、製造工程からは想像できない上品な香りが特徴である。日本では本格的な喫茶店でもめったにお目にかかれない一品なので、出合ったときには勇気を出してぜひ試してほしい。

コーヒーの王様「コピ・ルアク」

 

 

 

 

日本にも、うぐいすや野鳥の糞を乾燥させた伝統的な化粧品がある。糞に含まれる酵素に美肌効果があるといわれ、粉末状にしたものは洗顔料やパック剤として使用されていた。美しくなるためには汚物だっていとわない、そんな女性の切実な願いがうかがえるようだ。しかし現在では、残念ながら入手困難になっている模様である。

 

ほかにも、バイオ燃料としても注目されるなど、現代でも糞にまつわる研究は進んでいる。ただの汚物として扱われがちだが、利用価値があると思えば糞に対する見方が変わる日がくるかもしれない。