八百万から誕生した日本の神様

「八百万(やおよろず)の神」という言葉があるように、我が国では津々浦々に無数の神が祀られており、それぞれに興味深い来歴を持っている。個々の神の神格やご利益をあらかじめ知っていれば、その神社でどのようなお願いごとをすればよいのか、また、何を感謝すべきなのかがわかり、より有意義なお参りができる。

 神社に祀られる神々はさまざまであるが、自然神、働きや神格が顕在化した神、人格神などに大別される。自然神は、自然現象、気象、動植物、地形、地名などを神格化したものである。自然、気象は、太陽、月、星、風など、動植物は樹木、龍(水を象徴する架空の動物)、蛇、オオカミなど。地形・地名は、山、海、川、岩など、どれも人々の身近にあり、生活に影響を与えてきたものである。三輪山、熊野三山、白山などの山岳信仰も、自然神に対する信仰である。

 働きや神格が顕在化した神は、古事記や日本書紀に登場する国土創生の神、霊能神、食物神などである。国土創生の神とは、天照大神(あまてらすおおみかみ)、大国主命、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)など、記紀の中でも重要な役割を占める国造りに関わった神々。霊能神は、天照大神を岩戸から出すために踊った天宇受売命(あめのうずめのみこと)など、特別な霊的能力を持つ神々。

 食物神は、日本人が生きていくための基本的食物である五穀(稲、麦、粟、小豆、大豆)そのものを神格化した大宜都比売(おおげつひめ)や、天照大神の食を司る豊大神(とようけのおおかみ)などである。いずれも自然神よりも一歩進み、人間にやや近い神格を持った神々だ。

 人格神はさらに進んだ、人間を神格化した神である。歴代の天皇や皇族を祭神とする皇祖、皇族神や、一族の氏神、産土神(うぶすながみ)などの祖先神、文化、学術に優れた菅原道真などの人物や乃木希典(のぎまれすけ)などの英雄を祀る場合もある。

 神社では、一柱の神だけでなく、複数の神を祀ることも多く、また、自然神と人格神などを融合して祀ることもある。そのため、各地域の神社は、祭神名でなく、地名で呼ばれている。

 ある集落に八幡神社があった場合、人々は、祭神名である誉田別尊(ほんだわけのみこと、応神天皇)でなく、「その村の鎮守の八幡さん」と呼んでいる。例えば「代々木八幡」は「代々木という土地に祀られる八幡さん」という意味で、神社は祀られている土地と密接な関係がある。

 現在では、一カ所に定住することが少なくなったため、地域の人々と神社の関係は次第に希薄になってきた。大みそかに電車が夜通し動くようになって以降は、遠くの有名神社に初詣に行く人も多い。しかしやはり、自分と家族を守ってくれるのは、住んでいる土地に祀られた氏神様なのである。

 新年最初のお参りは、まずは近くの神社に行き、「今年も変わらずによろしくお願いします」とお参りし、近所の人々にも挨拶して、すがすがしい気持ちで一年を始めたい。


取材・文/吉田さらさ

~『一個人』1月号より~