日本一に輝いた日本ハムファイターズ栗山監督は、選手たちとどう接し、シーズンをどう戦ってきたのか。
 11.5ゲーム差を大逆転したシーズンで、指揮官が忘れられない振り返る試合とは、ベテランの研ぎ澄まされた感性が光った試合だった。
 12月21日刊行となった栗山英樹監督の新刊『「最高のチーム」の作り方』から独占配信する。

優勝したシーズンを振り返ると、必ずミラクルな勝利がある

 143試合を戦うペナントレースの中でも、特に記憶に残る劇的な試合がある。
 前日まで13連勝と勢いに乗って迎えた7月10日、本拠地でのマリーンズ戦。
 0対5の劣勢から、7回裏に一挙4点を返したものの、もう一本が出ず、1点リードを許したままいよいよ9回裏2アウトまで追い詰められた。連勝ストップまであとアウトひとつとなり、ランナーなしで打席には5番の田中賢介が入る。

 

 球界屈指の技術を誇り、つねに状況に応じたバッティングを見せてくれるベテランは、絶体絶命のこの場面、したたかに一発を狙っていた。なんとか塁に出て次につなぐという選択肢もあったが、球場全体のムードを敏感に感じ取り、イチかバチかの勝負に出たのだろう。技術的には、狙えばホームランも打てる選手だが、シーズンを通して狙う打席はほとんどない。そんな田中賢が、ここで狙った。その勝負感には舌を巻いた。

 フルカウントからの6球目、鋭いスイングから放たれた打球は低い弾道のライナーとなってライトスタンドへ一直線。これがチームを救う、起死回生の同点ホームランとなった。

 2007年に達成した球団記録の14連勝を経験している、ここ一番で頼りになる男が、本当によく勝負してくれた。
 そして、ファイターズが8人、マリーンズが9人のピッチャーをつぎ込む総力戦に決着をつけてくれたのは、レアードだった。延長12回裏、先頭で打席に立ち、レフトスタンドに飛び込む劇的なサヨナラホームラン。札幌ドームに満開の笑顔がはじけた。

 よく優勝したシーズンを振り返ると、必ずひとつやふたつ、ミラクルな勝利があるものだといわれるが、球団記録に並ぶ14連勝をマークしたこの試合は、まさしくそんな一戦だった。やっているほうが感動する試合だ。

 また、これが北海道日本ハムファイターズとして、ホーム通算500勝というメモリアルが重なる勝利となり、本当に忘れられない一勝となった。栗山英樹・著『「最高のチーム」の作り方』より抜粋)