2016年シーズン、日本ハムファイターズが日本一を達成したなかで、多くのファンや野球関係者がうなった「栗山采配」があった。クライマックスシリーズファイナルステージの第4戦。初回に4点を取られたファイターズが、試合を一気にひっくり返した4回裏の攻撃「代打・岡」だ。
 あのときの決断にはどんな根拠があったのか。
 栗山英樹監督の新刊『「最高のチーム」の作り方』を中心に、栗山監督の戦う哲学を紐解く。

 クライマックスシリーズ第4戦。3勝2敗(1勝のアドバンテージ)で迎えたこの一戦、初回にファイターズは4点を先制されいきなり窮地に追い込まれる。しかし、ここから「栗山采配」が冴えわたる。
 継投のバース。中田翔のホームラン、流れを変えた契機はいくつもあったが、4回の攻撃がその象徴であっただろう。
 栗山監督はそのシーンを『「最高のチーム」の作り方』でこう振り返っている。

■4点先制されて、頭がクリアになった

 1回表、先発の加藤貴之がホークス打線につかまり、1点を失い、なおも2アウト1、3塁という場面、一瞬、2日前のことが頭をよぎった。
 2日前の第3戦、初回に近藤のタイムリーで1点を先制したあと、ランナー2人を置いて、レアードが3ランホームランを放ち、一挙4点を奪った。
 あの日のウチと同じようなシチュエーションで、バッターは一発のある松田。イヤな感じだなぁ……、と思っていたら、松田宣浩の打球はあっという間にレフトスタンドに飛び込んでいった。悪い予感は当たるものだ。

 このまま連敗して最終戦にもつれ込んだら、どう考えても分が悪い。何がなんでも勝ちにいく。今日、決めにいく。

 いきなり4点取られてそう思ったら、スーッと頭の中がクリアになって、冷静なのに自分の中にメラメラと燃え上がるものを感じた。
 その段階で、まだ1回裏の攻撃中であるにも関わらず、代打の切り札・矢野謙次には「いつでもいけるよう準備しておいて」と指示をした。自分が「攻めダルマ」になったような、不思議な感覚だった。

 高校野球ファンにはおなじみの「攻めダルマ」というのは、かつて徳島県の池田高校を率い、甲子園で春・夏通じて3度の優勝を飾った名監督・蔦文也さんの異名で、チームが圧倒的な攻撃野球で勝ち進んだことから、そう名付けられた。その尊敬する蔦さんにあやかり、「攻めダルマ」になってなりふり構わず攻めて、攻めて、攻めまくる。

 そこから2回と3回に1点ずつを返し、迎えた4回裏、ヒットとふたつのフォアボールで1アウト満塁のチャンスを作り、8番・大野奨太に打順が回ったところで、迷わず「代打・岡」を告げた。

 ホークスのピッチャーは先発の摂津正から、2番手の東浜巨に代わっていた。

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