落語「猫の恩返し」は忠義のドロボー猫(イメージ)

 

 

自由気ままな性格で、ツンデレとも称される猫は、甲斐甲斐しく世話をしてもそっけない態度をとられることがある。飼い主を下僕とすら思っている節がありそうだが、落語には「猫の恩返し」という演目がある。

博打で金を失った男が愛猫に「金を持ってこい」というと、翌朝、小判があることに気づく。それに気をよくした男は「もっと持ってこい」というのだが、大店で小判を盗もうとした愛猫が殺されてしまうのだ。甲斐性のない飼い主であっても、自分を犠牲にしてまで尽くす姿は、まさに“忠猫”である。

 

ほかにも、日本各地には猫の恩返しにまつわる昔話が伝えられており、「猫檀家」といわれる逸話が有名だ。地方によって細部は異なるものの、貧しい寺の和尚が、飼い猫や助けた猫の不思議なパワーに助けられて名声を手にする、という流れは変わらない。

主人の恨みをはらし、「猫神」として祀られている猫もいる。お松の夫は村を救うために金を借りたが、返したにもかかわらず証文を受け取らずにこの世を去った。お松はこの証文を返してほしいと訴えても、逆に金をまだ返していないと無実の罪を着せられてしまう。

さらには処刑されることになったお松は、恨みをはらしてほしいと愛猫のお玉に告げると、お玉は悪人たちを祟って報復を果たしたのだ。これは「阿波の猫騒動」ともいわれる。

現在、お松とお玉は徳島県の王子神社に祀られ、心願成就の神社として知られるようになった。悲しい結末を迎えたわけだが、こうして時代を超えて人々に愛されることで、少しは報われてほしいと願うばかりだ。

 

福岡県宮若市のイメージキャラクターである「追い出し猫」も、人々のために尽くした猫の逸話がモチーフになっている。寺に住み着いた大ネズミを追い出すために、猫たちが団結して死闘を繰り広げ、この土地を守ったといわれている。

現在は「さくら」という名のご当地キャラクターも生まれ、箒を持った招き猫の置きものが縁起物として広まりつつあるようだ。

 

現代にも、猫の恩返しをテーマにした作品がある。それは、スタジオジブリの映画『猫の恩返し』だ。

主人公は猫の国の王子を助けたものの、お礼といえば、マタタビやネズミなど、もらってもうれしくないものばかり。しかも、猫の国の王妃にされてしまいそうになるが、かつて助けた猫のおかげで元の生活に戻ることができた。ファンタジーの世界でも、猫たちは義理深いようだ。

 

昔から「犬は人につき、猫は家につく」などといわれてしまうが、こうした逸話が数多く残っていることからも、本来は飼い主思いの一面があるのだろう。ふだんはつれない態度をとってしまうのは愛情の裏返しなのかもしれない。