予備校講師としてだけでなく、タレントとしても華々しい活躍をしている林先生。芸能人と仕事をするようになって、自分のトークが名MCと言われる人たちより遅いと感じたそうです。


決して真似できないトークの瞬発力

 テレビの仕事を始めてみて、芸能界の人はすごいなと、つくづく感じました。たとえば爆笑問題とくりぃむしちゅーのお二人に、先日、初めてご一緒した所ジョージさん。みなさんのMC(司会進行)はテンポがよくて、やわらかく巧みに話を回していく。到底、僕には真似できません。僕も努力はしているんですが、全然追いつけません。

写真/花井智子

 最も差を感じるのは、トークの瞬発力ですね。誰かの言葉を受けて、即座に会話をつなぐ。僕のトークのスピードはコンマ5遅いんです。コンマ5ってほんの一瞬ですが、テレビでは致命的。3年間テレビに出ていても、やっぱり遅いと感じています。
 なぜ僕がコンマ5遅れるのか。そもそも言葉が出てくる頭の層が違うのではないかと思っています。お笑いの人たちが頭の表面で反射的に言葉が出てくるような気がします。それでいて切れがいいから、すごいんです。それに対して、僕はもう一つ下に引き込んで、思考や論理を組み立ててから言葉を出したい。これなら、マズマズのことが言えます。反射で切れのいい言葉を放つ才能が、僕にはないんだから、こうするしかないんですよ。僕がすべきなのは、少しテンポを落としてもいいから、ぐっと掘り下げたり、観点を広げたり、他の話題と関連付けたりといったこと。あまり人がやらないことに、活路を見出しています。

 実は、会話が遅れる原因はもう一つあるんです。それは、難しい言葉、どちらかというと皮肉っぽい言葉が、最初に出てきてしまうということです。それをぐっと飲み込んで、テレビ向きの平穏な言葉に変換する分、ワンテンポ遅れてしまうようです。

 いずれにせよ、トークのテンポは、訓練よりは素質の賜物です。できないことは、努力したところでそう簡単にはできるようになりません。そもそもできないんですから。予備校の講師にあるまじき発言とよく言われますが、これが僕の持論です。ですから、トークの瞬発力を磨こうとは考えていません。最初からできる人には、永遠に追いつきません。その代わり、先に述べたようにたとえ少し遅れても、思考に裏打ちされた論理的な言葉の精度を上げようとは思っています。これはもともと努力なしにできたことですから。
 

明日の第六回の質問は「Q6.なんのために今の仕事をしていますか?」です。