「好感度低い芸人」として知られるキングコング・西野亮廣。アンチや批判的なコメントの数々に凹むどころか、彼らを「利用」することで本の売り上げにつなげている。ここまで聞いてきた『えんとつ町のプペル』を売るために考えたこと――その着想はどこにあったのか。

本の売り方・作り方をニュースにしてしまう

――11月中は「えんとつ町のプペル展」を開催し、西野さんも毎日のように顔を出されていました。個展期間中はスタッフさんも大変だったんじゃないでしょうか?

『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)

 本当に小さなギャラリーに2万人以上の方が来場されたので、僕もスタッフもフル稼働で、てんやわんやでした。個展で働いてるスタッフさんの給料に回すためにポストカードをいっぱい作ったんですよ。
 そしたら、この間個展会場を使って、営業時間外で、外国人グループがパーティをやってたんです。彼らがポストカードを500~600枚くらいごっそり持ち帰っちゃいました(笑)。1枚300円ですから、ちょっとした窃盗ですよ。たぶんフライヤー感覚で持ち帰っちゃったんじゃないかなとは思うんですけど。こっちも物販ブースに人を座らせてなかったし、ポストカードには値札も付けてなかったんで、しょうがないです。彼らに罪はありません。盗んだつもりもないだろうし。
 それに、興味のなかった人にも『えんとつ町のプペル』の絵が広まると思えば、それはそれでいいかな。ただスタッフさんに給料を払うための収入源がなくなっちゃったんで、大ピンチですね(笑)。


――西野さんが窃盗にあった、というニュースが炎上して、本の売り上げに貢献するといいのですが(笑)。

 

 ですね(笑)。炎上ということで言うと、『えんとつ町のプペル』を作るときも「議論を巻き起こさなきゃダメだよね」という話はスタッフとしました。完璧なものを作るより、ちょっと「マズ味調味料」みたいなものをかけて、反対派がツッコめる隙を作っておく。
 だから1回目のクラウドファンディングのタイトルは「【世界初】キングコング西野が、常識破りの手法で絵本『えんとつ町のプペル』を作る」と銘打ちました。分業制の絵本なんて、絶対に世界初じゃないんですよ(笑)。そしたら「世界初じゃない」ってツッコむ人が必ず現れて、それ自体が宣伝になる。そういうコメントをあえてシェアして、リツイートして、反対派を増やすみたいなこともやってました。
 「アイスバケツチャレンジ」がそうだったんですよ。筋委縮性側索硬化症(ALS)という難病の研究を支援するために、バケツに入った氷水をかぶるか、ALS協会に寄付をするかを選ぶ、というチャリティキャンペーン。
 あれは、「お金が集まるんだからいいじゃん」という賛成派と、「病気をお祭りごとにするのはどうなの?」という反対派が延々と議論してましたよね。その間、ずっと「アイスバケツチャレンジ」の宣伝になっていた。もし10割の人が賛成していたら、みんなもっと早いうちに興味を失って、あんなにお金は集まらなかったし、助かる人も少なかったんじゃないかな。


――「反対派に隙を作る」といった「本の売り方」は、いつごろから頭の中で整理されてきたんですか?

 考えが変わったのは、3冊目の『オルゴールワールド』という絵本を出したときからですね。
 それまでは作家は作品を生み出すことだけに集中して、売ることはよしもと(会社)とか、出版社に任せることがカッコいいと思ってました。でも作るだけ作って、売ることは人任せって育児放棄みたいな感じがして。本が売れなかったときに、よしもととか出版社のせいにもしたくない。売るための動線をきちっと作ろう、売らなきゃダメなんだと思ったんです。
 売ろうと思ったときに、絵本の内容がニュースになることは絶対にないから、売り方・作り方でニュースを作っていかなきゃいけない。どのタイミングでどんなニュースを出すか、ということも連日の会議で決めていきました。

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