◆そもそも、韓国の囲碁界の魔王と戦った、「アルファ碁」とは?

  米Google傘下DeepMindのハサビスCEOが、「アルファ碁」の改良版の存在をツィッターで発表した。なんと、昨年末からプロ棋士を次々と破った「謎の棋士」”マスター”の正体は、人間ではなくAIだったというのだ。
  そもそも、アルファ碁戦とはどのようなものだったのか。

◆アルファ碁VSイ・セドル九段戦を振り返る 

 2016年3月9日からの1週間、韓国ソウルのフォーシーズンズホテルにてその対戦は行われました。アルファ碁(AlphaGo)という名前の囲碁プログラムと、韓国のトッププロ棋士の一人であるイ・セドル九段の5番勝負です。アルファ碁は、グーグルが2014年に買収したイギリスのディープマインド社が開発。最新のAI技術を駆使したプログラムで、2016年1月末には『ネイチャー』にその強さを報告する論文が掲載されていました。
 論文には、アルファ碁が既存のどのプログラムよりもはるかに強いこと、またプロ二段のヨーロッパチャンピオン、ファンフイ(樊麾、Fan Hui)に5対0で勝利したことが誇らしげに書いてありました。しかもハンディキャップなし(「互先(たがいせん)」と言います)で勝利したというのです。数回の対戦だけではその強さは正確にはわかりません。1月末に研究仲間のメーリングリストに流れた情報で、アルファ碁のことや3月の対戦のことを知った私は、単純に「まだまだ人間のほうが強いだろう」と思っていました。

 

 日本で囲碁プログラムを開発している人たちの反応も、この時点では「ショックを受けた」というものから、「いや、まだまだ」というものまでさまざまでした。しかし、大方の予想は、イ・セドル九段が勝利するだろうというものでした。日本のプロ棋士たちの予想もほぼ人間の勝利で一致していたのです。インフォーマルな情報として、じつは論文に棋譜も掲載されている対局の他に、ファンフイとは非公式の5番勝負を行っていて、その結果はアルファ碁の3勝2敗であったなどという情報も流れてきました(『ネイチャー』の論文の付録には、このこともちゃんと書かれていました)。その上、イ・セドル九段とファンフイの間には大きな実力差があることもわかっていたからです。

 そして3月9日。第1局の結果が飛び込んできました。アルファ碁、勝利!

 第1局のユーチューブでの配信をご覧になった方も、かなりいたかもしれません。世界中で、6000万人の人たちがこの対戦に見入ったとか。第1局は淡々と進み、英語解説を担当したマイケル・レドモンド九段も、アルファ碁には悪い手がなく、最後までいい勝負との評価でした。投了後、すぐに仲間の棋士と対戦の敗因がどこにあったのかの検討に入るイ・セドル九段の姿が印象的でした。