長年かけてミネラル分を
取り込んだ美味しい水

 美味しい水の代名詞とも言える、富士山の名水。富士山麓には、環境庁の「名水百選」にも選定されている柿田川湧水群や忍野八海など、名水として有名な場所が数多く存在する。

 その美味しさの秘密は、富士山の雪解け水や雨水は長い年月をかけて地層を通り、カルシウムやマグネシウム、バナジウムなどの豊富なミネラル成分を取り込んでいるから。水の味はミネラルの含有量に左右され、多すぎると苦みや渋味を感じ、少なすぎると淡白に感じられる。水が美味しく感じられるミネラル量は30~200㎎/ℓとされ、富士山の水はまさにこれに相当する。

 さらに、㏗値も関係する。60%以上が水でできている人間の身体は弱アルカリ性であるため、同様に㏗7~8という弱アルカリ性の富士山の水は美味しく、身体にも優しいのだ。

 掘れば水が湧いてくる土地柄だけに、住民の相当数が井戸水を活用する一方で、彼らが一様に口を揃えるのが、水道水の美味しさ。水道水も富士山の地下水や湧水で賄われているため、最低限の消毒を施した〝ほぼ天然水〟を飲むことができる。有害物質のベンゼン含有量も国が定める水道水の基準値が0.01㎎以下であるのに対して、富士吉田市のそれは0.0002㎎/ℓと、格段に安心・安全な水質なのだ。

 加えて、大規模な給水整備が不要なので、このエリアは全国的に水道料金も安い。地元民からすると、富士の天然水が美味しいのは当たり前で、実は水道水のほうが自慢なのだ。

取材・文/牧 隆文 

『一個人』2016年8月号 「富士山の清水がつくった旨しもの」より