男と女の間には、深くて暗い川がある──。
というわけでもないが、そもそも男性、女性では「脳が違う」ということが、最近の脳科学では分かってきた。『幸せをつかむ脳の使い方』の著者で、脳科学者の中野信子先生に、男と女の脳の違いについて解説してもらった。
『幸せをつかむ脳の使い方』 著者の中野信子先生

◆女性にうつ病が多いわけ──
 前向きな気持ちにするセロトニン。
 女性は男性の半分しかない!?
 
 セロトニンは、人間の脳で「やる気」や「安心感」の源となると言われている神経伝達物質です。
 ところが、このセロトニン、女性は男性の半分のスピードでしか、つくることができません。
 また、ほかの多くの研究結果からも、女性は男性に比べてセロトニンの量が減りやすいことが明らかになりました。
 セロトニンの不足は、うつ病の原因になっているという有力な説があります。うつ病の原因を心理的、社会的な要因から分析している理論もあるのですが、やはり、見逃してはならない事実は、男性と女性では、脳が生理学的に違っているということです。
 実際、うつ病の発症率は女性が男性の2倍(調査によっては3倍とも)にものぼります。
 最近の研究で注目されているうつ病の原因は、次のようなものです。
 ●エストロゲンの不足(女性)
 ●テストステロンの不足(男性)
 ●日光をあまり浴びていない
 ●運動不足
 ●ビタミン、ミネラル不足  
 これらはどれも、セロトニンの分泌量を下げてしまう要因です。  
 もし、さしたる理由もなく気分が落ち込むことが多かったり、無気力になったり、緊張・イライラ・あまり眠れないなどの状態が続いたり、無性に大食いしてしまったり、ということがあるようなら、セロトニンの量が少なくなっている可能性があります。
 女性の体内で、女性ホルモンであるエストロゲンが不足していると、セロトニンの量も減ってしまうというのは、エストロゲンにはセロトニンの分解を防ぐ働きがあるためです。
 生理前になんとなくやる気がなくなったり、イライラがおさまらなかったりするのは、エストロゲンの量が少なくなってしまうからなのです。  
 また、更年期、閉経期の女性がうつになりやすいのは、やはりエストロゲンの分泌量が低下するからであると言われています。  
 ラットを使った実験では、脳のセロトニン濃度を下げると、ラットが凶暴化するということがわかっています。
 人間でも、とくに男性では、セロトニン濃度が下がると、攻撃性が高くなるということが知られています。  
 また、女性では、アルコール依存などの依存症になるリスクが高まります。セロトニン不足による「さみしい気持ち」や「不安な心」をお酒で紛らわしているうちに、依存症になってしまうのです。
 アルコール以外にも依存の対象となるものはいくらでもあって、たとえば食べ物をとりすぎたり、セックスに依存したりしてしまう人もいます。  
 逆に、セロトニンの濃度を上げると、ラットの攻撃行動は減ります。  
 人間でも、セロトニンの濃度の高いときには安心感をおぼえ、落ち着いた気持ちでやる気のある前向きな状態であるという内観が得られるでしょう。  
 また、セロトニンには、天然の鎮静剤や催眠剤としても、望ましい効果があると考えられています。  
 
 セロトニンのもうひとつの大きな働きは、満腹中枢を刺激することです。  普段からきちんとセロトニンの材料となるタンパク質をとることも、過食を防ぐためには必要なことですが、体重を落としたい(私は必要のない減量はあまりおすすめしませんが)というとき、少量の甘いものや炭水化物を摂取することで脳のセロトニン量を増やし、満腹中枢を一気に刺激してやるのもひとつの有効な手段です。
 あまりに炭水化物をとらないと、かえって満腹中枢がいつまでたっても刺激されず、常に空腹で食べ物のことばかり考えてしまい、結局リバウンド……なんていう結果にもなりかねません。