次々と「常識」を覆し、チームを勝利に導いていく。2017年もその手腕に注目が集まる北海道日本ハムファイターズ指揮官・栗山英樹氏。氏はいかにしてチームを作っているのか。発売2週間で4万部を突破した新著『「最高のチーム」の作り方』に、その秘密が書かれている。
 例えば、日本シリーズ後、大谷翔平に宛てた手紙――。
 

ファーストに全力疾走する大谷翔平の姿にファンは感動する

 日本シリーズでは、バッター・大谷が全力疾走でファーストベースを踏むとき、足をひねったように見えたシーンがあった。

 どのくらいひねったのか、痛みはどの程度なのか、本当のところは本人にしかわからないが、症状の軽い重いに関わらず、試合中にそういったことがあると、心のどこかで恐怖心が芽生え、次から無意識のうちに少しブレーキをかけてしまうのが人間心理というものだ。

 しかし、彼にはそれがまったくなかった。最後まで全力疾走を貫き通した。

 実は冗談半分か本当か、試合後に「今シーズン、終わったと思った」と漏らしていたというから、本当は相当痛かったんだと思う。それでも、大谷は走った。

 どうして今年の日本シリーズを、たくさんのファンの皆さんがテレビで観て、大谷を応援してくれたのかというと、実は二刀流とかではなく、彼のああいう姿だったんじゃないかと思っている。毎打席、ファーストに全力疾走するその姿に、ファンの皆さんは心を打たれたに違いないと。

 それを伝えたくて、日本一を決めた翌日、スポーツ新聞に寄せた大谷翔平への手紙に、こう記した。

「いつも厳しいことしか言いませんが、今日は一つだけ伝えます。
 翔平の道がどこにあるのか、翔平のファーストへ向かう姿、走塁にあると思っています。
 投手であっても常に全力で絶対にセーフになってやろうとする姿。
 シリーズでも初戦でベースを踏む際、足首を軽く捻り心配しましたが、最後まであの全てをかけてファーストを駆け抜ける姿を貫きました。

 常に全力を出し尽くす魂。

 そんな姿にしか野球の神様は微笑みません。
 野球の神様に愛されなければ天下は取れないのです。
 二刀流もその最も必要な魂があるからこそ成り立っていると思っています。」

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