オーケストラは優れた演奏技術を持つ奏者を集め、古典的かつ格式高いメロディを優雅に奏でる。ポップス全盛の現代では、クラシック音楽に高尚なイメージを抱くかもしれない。初心者にはとっつきにくいと感じるだろうが、なかには非常にユニークな楽曲も多く存在する。

 

たとえば、アメリカの音楽家、ジョーン・ケージが作曲した「4分33秒」では、楽器が演奏されることはない。ステージ上に指揮者や奏者がいても、彼らは“休み”をあらわす「tacet」という指示に従い、音を奏でることなく終わってしまうのだ。

 

なんともシュールな楽曲であるが、あえて静寂な空間を創り出すことによって、周囲の物音などを楽しむものだという。また、複雑になりすぎた音楽に対して、もっともシンプルな構成を極めていると評する声もある。芸術ととらえるか、音がなくて退屈だと感じるか。オーディエンスによって評価が大きくわかれる楽曲だ。

 

ユニークなタイトルといえば、かの有名なモーツァルトが残した楽曲のなかにも見ることができる。その名は「俺の尻をなめろ」だ。

 

モーツァルトといえば、古典派音楽の巨匠であり、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、「トルコ行進曲」など、クラシックとは縁遠い人にまで知られる楽曲を後世に残した音楽家。その彼が、下ネタ全開の曲を作るとは、想像しがたいのではないだろうか。

 

しかし、このタイトルは原題「Leck mich im Arsch」を直訳したものであり、本来は「消え失せろ」「畜生」などをあらわすスラングなのだとか。酒の席を盛り上げるために作られたともいわれ、モーツァルトのエンターテイナーとしての一面がうかがえる。

 

音楽の教科書にも、インパクトが強いクラシックが登場する。歌曲「魔王」は、熱でうなされた少年の幻覚や幻聴を歌ったもので、華やかなクラシックの世界とは大きなギャップがある。おどろおどろしい旋律と恐怖を誘う歌詞が、多くの学生に衝撃を与えたはずだ。

 

この曲の作者、シューベルトもまた、「結婚式の焼肉」という、クラシックらしからぬタイトルの曲を残した音楽家である。招待客にごちそうを振る舞おうと禁猟区に入った夫婦が猟師に見つかり、式に招待することで口止めをしようとする歌だという。こうした意外な題材もクラシックの世界に使われているのが興味深い。

 

歌劇や現代音楽は、クラッシックのなかでもとくに個性豊かな作品が見受けられる。タイトルや誕生した背景は知るほどにおもしろく、クラシックの世界に足を踏み入れるきっかけになりそうだ。