いま話題の「糖質制限」は、糖質摂取量をコントロールすることでやせることができるダイエット法として注目されています。しかし、「糖質制限」は本来一種の医療行為であり、糖尿病でもない健康な人には必要のないものであると糖尿病専門医・牧田善二氏は指摘しています。健康な人が気にするべき、「糖質制限」よりも大切なことを『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)より紹介します。 

◆高血圧なら必ず下げる

 マイクロソフト社のビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金を投じ、一九九〇年から二〇一三年までの長期にわたり、世界一八八か国を対象に、私たちに死をもたらす七九項目の危険因子について調査が行われた。
 その結果をもとに修正可能な危険因子の順位付けをしたものが『The Lancet(ランセット)』オンライン版(二〇一五年九月一〇日)に掲載された。
 世界でも日本に限っても、その一位は「高血圧」である。つまり、調査期間の二三年間で、世界でも日本でも高血圧が引き金となって死んだ人が最も多かったのだ。
 血圧が高ければ、血管壁に負担をかけ続けることになり動脈硬化も進む。高血圧自体で死ぬのではなく、それによって心筋梗塞や脳卒中、腎臓病などが引き起こされる危険性が増すのだ。
 言ってみれば、高血圧は万病のもとである。とくに糖尿病の患者さんは、腎症を悪化させないためにも血圧コントロールが必須だ。
 私は糖尿病はないが、血圧が高めなので降圧剤を飲み続けている。脳卒中の発作を起こして寝たきりになるのは避けたいからだ。

◆血圧はどこまで下げる?

 二〇一四年、日本人間ドック学会が、独自の健康診断の基準値を打ち出し議論を巻き起こしたことは記憶に新しい。血圧の上限値に関しては、「上(収縮期)が一四七(㎜Hg、以下略)、下(拡張期)が九四までなら正常」というラインが示された。
 あなたが、健康で長生きしたいと考えるなら、これを真に受けてはいけない。
 まず、血圧は一日の中でも変動が激しく、一度医療機関で測っただけでは自分の傾向はつかめない。また、医療機関で測ると緊張して高くなってしまうこともあるから、自宅で毎日計測するのが望ましい。
 上腕で測るタイプの血圧計を購入し、朝起きて排尿した後、出かける前、帰宅後、就寝前など、いろいろな時間帯に測定し、記録することをすすめる。
 そして、リラックスした状態で測れる「家庭血圧」は、「診察室血圧」よりも厳しく、上は一三五未満、下は八五未満を正常と考えたほうがいい。糖尿病があるならさらに厳しくして、上を一二五未満、下を七五未満に抑えるべきだ。
 この基準を超えているようなら、薬を使ってでも下げるほうがいい。

◆こんな塩分に注意

 もう一つ、先の調査で日本人の危険因子の四位に「塩分過剰摂取」が入っていることも看過できない。塩分過剰摂取が高血圧や腎臓病を引き起こすことは明らかだ。

 

 少し古いデータになるが、一九八八年の調査では、日本人の一日の塩分摂取量は平均一二・四グラムとなっている。アメリカは八・二グラム、イギリスは九・七グラムだから、いかに高いかがわかる。
 二〇一五年、厚生労働省は一日の塩分摂取量の目標値を改訂し、男性は八グラム未満、女性は七グラム未満とした。しかし、WHOの定める目標値は五グラム。それだけ塩分過剰摂取が健康に与える害が大きいと考えられているのだ。
 私自身、自分の患者さんに、「塩分摂取量を確実に一日八グラム以下にするように」とお願いしている。最近、塩分摂取量を正確に測定できる検査ができたのだ。しかし、八グラム以下というがなかなか難しい。
 とくに、外食は塩分が多いと考えて間違いない。というのも、一口目を食べたときに薄味だと、人は「美味しい」と感じにくい。だから、客にリピートしてほしい店は味付けを濃くする傾向にあるのだ。
 また、コンビニの弁当やおにぎりにも塩分が多く含まれる。それらの多くが「ナトリウム表記」を用いていることに注意してほしい。
 実は、「ナトリウム一グラム=食塩一グラム」ではない。ナトリウム表記の場合、約二・五倍にして計算する必要がある。つまり、ナトリウムが一グラム入っている食品を食べたら、食塩二・五グラムを摂ったと考えねばならないということだ。
<『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)より一部抜粋>