「安倍マリオ」の登場などで話題を呼んだ、昨年夏に行われたリオ五輪閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニー。なんと当日の会場ではリハーサルができなかったそうで……。衝撃の舞台裏を演出振付家のMIKIKOさんが明かしてくれました。

すべての要素が揃った演出を見られたのは本番だけだった

 どんな公演でも、「どんな技術を使うのか」ということを先に決めないと、装置を作れませんから、コンセプトが決まったらまずはそこから決めます。その公演で求められるお題と、会場の条件に合ったものはなんだろう?ということから考え始めます。

写真を拡大 Photo by Tokyo 2020 / Shugo Takemi

 フラッグハンドオーバーセレモニーで使った技術は、LEDのフレームと、AR映像の演出、そして床面映像です。そこから楽曲に合わせて、まずは振付を考えます。実寸を取った会場で、木の枠でLEDのフレームを模したものをダンサーに持って踊ってもらう。床面映像については、このときに“フレームがこの位置にくるので床が反応してください”とか、”青森の子たちが着地するタイミングがカウント4のときなので、床が引っ込んで見えるようにしてください、というようにお願いします。イメージとしては、真っ白い塗り絵の中にどんどん色を塗って行ってもらうイメージですね。

——苦労した点はありますか。

 当日の会場ではリハーサルができず、床面とフレームとダンサーという全要素を合わせて見られたのは本番だけでした。リハーサルができないので、ライゾマ(ティクスリサーチ)さんがシミュレーションアプリを作ってくれたんです。パソコン上で輝度を確認できるもので、床面の映像がこれくらいの明るさなので、フレームのLEDの光量は30%の明るさにしよう……というような。フレームが傾く瞬間に光がこう傾きます、というプログラムをシミュレーションするので、ダンサーはそれを見て、脳内で「こうなってるんだ」と想像することができる。そういうテクノロジーの使い方もあります。

——とてもリハーサルなしとは思えない、見事な演出でした。

撮影/杉田裕一 [POLYVALENT]

 もちろん、綿密な練習とシュミレーションを重ねた上での本番ですが、リハーサルなし、という緊張感も視聴者に伝わったんだと思います。LEDのフレームは無線で制御されているんですが、万が一、無線が飛ばなかった場合には、ダンサーの耳のインカムで流れている「ワン、トゥー、ワントゥースリーフォー」というクリックの「フォー」のときにボタンを押すべし、というバックアッププランを準備していました。「万が一無線が飛ばないときは舞台監督から指示が入るから、そのときには押してね」とみんなにお願いして。怖いですよね(笑)。そうやって、本番が成功するようにたくさんのトラブルシューティングをしてバックアッププラン を準備してあの8分間に挑みました。

明日はMIKIKOさんへの最後の質問です。第二十八回の質問は、「Q28.将来の夢を教えてください」です。