気楽に鉄道を利用して日帰り温泉旅ができないかな、と考えた。首都圏からなら、伊豆や箱根が思いつくが、東北の温泉地であまり馴染みのないところがいい。もっとも列車本数の少ない路線では、スケジュールに制約が出そうだ。と思ってあれこれ調べていたら、JR福島駅から出ている福島交通飯坂線が目に留った。

福島交通飯坂線ホーム。左は阿武隈急行の乗り場

 飯坂温泉は、東北の有名温泉地のひとつであるし、飯坂温泉が終点の飯坂線は、25分に1本という、ローカル線にしては利用しやすい路線だ。しかも、日帰り温泉がセットになった「花ももフリーきっぷ」というのがある。往復の電車賃と温泉施設入館料合わせて1500円となっていて、別々に買うよりも620円安い。電車賃が往復で120円と考えるのか、温泉施設入館料が半額近くになるのか、ともあれ、東北新幹線で福島まで行き、JRの駅に隣接した福島交通飯坂線の駅窓口でこのきっぷを購入して、ホームに出た。

 

 面白いことに、1本のホームは右が福島交通飯坂線、左が阿武隈急行となっている。改札口は共用なので、鉄道車両に興味がないとまごついてとんでもないところへ行く恐れもある。しかも、同時に2社の電車が停まっていることもあるからややこしい。飯坂線の車両は、ステンレスの2両編成の電車で元東急のもの。「花ももフリーきっぷ」発売中のヘッドマークを付けていたので間違えようがない。

 

 車内は東急時代と一部を除いて変わらず、通勤型ロングシートはそのままだ。ぎっしりではないものの、ほど良く席が埋まると出発となった。しばらくJR東北本線と並走し、曾根田の次は、右手に林が見えてくると美術館図書館前。福島県立美術館と県立図書館の最寄り駅だ。東京の京成電鉄にあった博物館動物園駅を思い出すが、こちらは、そこそこ利用者もあり、京成電鉄の駅のように廃止の心配はなさそうだ。

 

 美術館図書館前を出ると、JR東北本線を跨いで飯坂温泉を目指す。しばらくすると県道がぴったり寄り添い、飯坂温泉駅近くまで並走する。クルマとの競走となるが、もちろん懸命に走る飯坂線を応援したい。

桜水駅の車両基地。左右が新たにデビューする電車

 岩代清水、泉とこまめに停まり、松川を渡って笹谷へ。ここまで10分程で、ほぼ中間地点ということで対向電車とすれ違う。向うの電車が到着するかしないうちにドアを閉めてしまうのは、乗り越して戻ろうとするのを防ぐためだろうか?ドアを閉めたまま数秒停まったままで、一呼吸おくようにして発車。次の駅まではあっという間で、車両基地のある桜水。雪を屋根にいただいて停まっている電車をよくみると、見慣れない新たな塗り分けの車両が混じっている。2017年春にデビューする新型車両(といっても東急からの払い下げ車両)のようである。

雪景色の小川を渡る車窓風景

 車窓を見ていると、しだいに線路際に畑が増えるけれど、雪のため真っ白で何が何だかよく分からない。芭蕉も訪れたという名刹の最寄り駅医王寺前(といっても歩くと15分程かかるそうだ)を過ぎ、小川という名前の川を渡ると花水坂。駅前に片岡鶴太郎美術庭園がある。石庭ギャラリーは雪に埋もれてお休み中らしいので、冬でない時に来てみたい。この駅を出ると、右にカーブし、あっけなく終点飯坂温泉駅に到着した。

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