絶好調と言えた。
 94マイルを超える速球はうなりを上げ、88マイルのスプリットにバットが空を切る。

「2016シーズンの田澤純一はすごい」

 4月。テレビでボストン・レッドソックスの試合を観ていた筆者は思わずつぶやくーー。それほどシーズン序盤の田澤のピッチングは圧巻だった。
 2015シーズンを61試合登板、2勝7敗と不本意な成績で終えた田澤は、期する思いを持ってこの新シーズンに臨んでいた。
「最初はすごく調子が良かったんですよね」
 本人もそう振り返るように、開幕から5月28日まで約2カ月間で21試合に登板、19回3分の2を投げ防御率1.40、25の三振を奪っている。4月に至っては3本のヒット(うち1本は本塁打)しか許さない、まさに“無双”ともいえる状態だった。

 しかし、序盤の快進撃とは裏腹に田澤の2016シーズンは納得のいかないものに終わる。メジャー8年目、日本人投手では5人目となる300試合登板を果たし、4年連続で50試合以上に投げたにもかからずである。田澤は言う。
「怪我もありましたし、心と体のバランスがうまくいかなかった。大きな反省点がある一年でした」
 そしてこの年、23歳で渡米して以来、着続けた赤いユニフォームを着る最後の年になった。
 FAとなった田澤が新たに契約を結んだチームはマイアミ・マーリンズ。将来を嘱望される若手選手が揃い、イチローも所属する。なにより、田澤にとってキャリアハイとなる2年14億円(推定)と言われる契約は、これまで歩んできた8年間がメジャーでいかに高く評価されているかを物語っている。
 9年目のシーズンに向けて、新たなチームで新たな歩みを始める田澤純一に迫る。

 

――新天地が決まりました。素晴らしい契約にはメジャー8年間の手ごたえを感じたのではないでしょうか。

田澤 うーん、どうなんですかね。とても光栄ではありますけど、そのぶん僕はきっちりと結果を残さなければいけないという思いのほうが強いです。そもそも、交渉に関して僕は何もしていないですから。エージェントが頑張ってくれて、そこには感謝の思いしかないです。

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