2019年ワールドカップ日本開催。日本におけるラグビーの復活は、この大会の成功をなしくしては語れない。19年への動きは、日本開催が決まって以降さまざまな形で、さまざまな努力で始まっていた。そのひとつが「スーパーラグビー(SR)」。その一人が岩渕健輔・日本ラグビーフットボール協会、元日本代表GMだ。2シーズン目に突入するSR、19年への意義を岩渕氏の著書『変えることが難しいことを変える。』より紹介する(前後編)。※本文の記述は2015年9月刊行時点のもの。【前編】

選手とチームレベルを引き上げ、ラグビー界の経営体質を変える

 2014年11月、幾多の紆余曲折を経た末に、日本のスーパーラグビー参戦決定が正式に発表される。あの時の喜びは、言葉に尽くせないものがあった。

 

 もちろんW杯のイングランド大会や日本大会、リオ五輪と東京五輪に向けた課題は山積しているし、最も重要な「2021年以降」に向けて、日本ラグビーの命運をどうつなげていくかという大問題は残っている。その意味でスーパーラグビー参戦は、あくまでも一つの通過点に過ぎない。
 しかし日本ラグビーが抱える三重、四重のジレンマを乗り越えて未来に向けて歩みだしていく上で、大きな足がかりになるのは間違いない。

●根本となる強化の枠組み作りに

 まずはサスティナビリティー(継続的に強化が図れる仕組み)の確保。
 スーパーラグビーの意義は、選手個人ではなくチームとして参戦できる点にある。
 確かに大会には、特別編成されたチームで臨む形にはなるが、日本が送り込むチームは代表に限りなく近い位置づけになる。またティア1(編集部注・ラグビー界における国別の「階級」。ティアは「階層」を意味し日本はティア2に位置する。ティア2の国がティア1の国とマッチメークするのは非常に難しい)とのマッチメークのように単発の試みではなく、公式戦の一環として、定期的に世界のトップクラスと戦うことが可能になる。これは選手の流出を防ぎ、リーグの空洞化を避ける効果も持っている。
 同時にスーパーラグビーへの参戦は、企業スポーツをベースにした日本ラグビーの枠を維持したままで、トップリーグの大幅なレベルアップを図ることも可能にする。世界トップクラスの選手たちと激しい戦いを繰り広げていけば、自ずと選手のレベルは上がっていくし、プロ意識も育まれていくだろう。何より同じラグビー人として、強烈な刺激を受けないはずがない。スーパーラグビーは、「世界」と「日本」のギャップを埋める架け橋になる。

●観客動員やスポンサー獲得も期待できる

 次はプロフィッタビリティー(収益が確保できる仕組み)だが、この点でもスーパーラグビーに参戦するメリットは大きい。スーパーラグビーは一つのスポーツエンターテインメントとして、完全に採算ベースで運営されているからだ。
 実際の参戦に向けては、日本協会とスーパーラグビーをマネージメントする一般社団法人が共同でチームを編成するため、観客の動員やスポンサー獲得などの面においても、これまでにはなかった形で日本ラグビー界全体に恩恵を与えていくことができる。
 現代社会におけるスポーツは、収益性の高いビジネスモデルなくして成立しない。スーパーラグビーへの参戦は、日本ラグビーを支えてきた企業の負担を軽減しつつ、協会の経営体質を改善する。ひいては代表の強化や次世代の選手育成だけでなく、インフラの整備による草の根レベルでの競技人口の拡大も可能にするはずだ。

『変えることが難しいことを変える。』より構成/後編に続く)