「腰痛症」は腰ではなく脳の異常?

 腰には異常がなくても、痛みが止まらない「腰痛症」。医療現場では、その一因が脳にあると認知されてきて、治療に心理的なアプローチも試みられているという。

 心因性の慢性腰痛について長年研究を続けている福島県立医科大学(福島医大)では、意外な治療法を患者に行っている。それは、安静をとるのではなく、痛くても体を動かすという運動指導である。しかも、劇的に軽減する人が増えているというから驚きだ。治療に関わってきた整形外科教授・大谷晃司さんも、「手術で痛みを治すという整形外科医としての考え方が、コペルニクス的に変わった」と話す(雑誌『一個人』2016年12月号取材時)。

 腰痛の人にとっては、痛いのに動くのは無理、と思えるかもしれない。しかし、「痛くても10分だけ家事をやってみよう」「痛くても買い物に行ってみよう」と、身近な目標設定をしながら行動を変えていくと、自信がついて痛みの原因となっているストレスが減っていくのだという。

「認知行動療法の手法を取り入れ、『できない』という思い込みや考え方の偏りを修正して行動を変えていきます。さらに、筋力を維持して痛みへの不安を克服するために運動療法も継続し、心身両面から治療していくことが、心因性腰痛には大切なのです」と大谷さんは語る。

▲心因性腰痛テスト「BS-POP」

 福島医大では、整形外科で骨や筋肉の診察をし、心因性腰痛の疑いがあれば心理テストを行い、結果によっては心身医療科を紹介するなど、ほかの診療科と連携を取りながら治療を進めている。こうした方法はリエゾン(連携)療法と呼ばれ、海外ではかねてより心因性の疾患に有効だと認められている。しかし、日本で実施している医療機関はまだ少ないのが現状だ。

「腰痛で苦しいのに心の問題と言われても、患者さんは納得しにくいもの。リエゾン療法を受け入れてもらうには、しっかりした信頼関係が必要ですし、時間もかかります。これまではそうした難しさがありましたが、最近では心因性腰痛が広く知られて、自分の慢性腰痛は心因性ではないかと受診される方も増えています。今後は治療機関も増えるでしょうね」。

 腰が痛くて旅行や趣味を楽しめない人生を過ごすのか、それとも、積極的に動ける人生を選ぶのか。腰痛があるとないとでは、QOL(人生の質)が変わってくるもの。慢性腰痛に悩んでいるなら、まず、映画に行く、散歩に行くなど自発的に動き、ストレスを発散し、リラックスするよう心がけること。気持ちいいことをすると、人間の脳は活発に働き、痛みも軽減される仕組みになっているのだ。


【慢性腰痛改善への心得】
1 ストレス解消を心がけ、実行する。ネガティブな考え方を修正する。
2 安静より運動が効果あり。痛みを気にしすぎず、体を動かす。